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専門委員会成果物
プリアンブルの文言が発明の使用目的を単に特定するのみの場合,発明はプリアンブルの文言で限定されないと判断した事例
CAFC判決 2019年3月26日Arctic Cat Inc. v. GEP Power Products, Inc.
[経緯]
Arctic Cat Inc. (A社)は,特許7,072,188(’188特許)と特許7,420,822(’822特許)とを保有している。’822特許は’188特許の継続出願に該当し,各々の明細書には電力分配モジュールが開示されている。
GEP Power Products, Inc.(G社)は,’188特許と’822特許に対してそれぞれIPRを請求し,各々の特許のすべてのクレームが特許法102条または103条に基づき無効であると主張した。A社は,クレームの プリアンブルが発明内容を限定していることを主張した。具体的には,’188特許のクレーム1及び11における「a personal distribution module for a personal recreational vehicle」,並びに’822特許の クレーム1の冒頭の「a personal recreational vehicle」である。
PTABは,いずれの特許においても,「a personal recreational vehicle」というプリアンブルの文言で発明は限定されないと判示した。A社はこの判断を不服とし,CAFCに控訴した。
CAFCは,プリアンブルは限定として扱われないという原則を示したうえで,以下の様に判断した。
’188特許については,クレームボディにおいて構造的に完全に発明が記述されており,プリアンブルはその使用目的を述べているにすぎないとした。この特定の使用目的が,クレームボディによって規定された内容を超えて何らかのモジュールの構造的要件を課すことをA社は示していない。さらに,審査過程において,A社がクレームの発明を従来技術から差別化する際に,プリアンブルの文言に頼らなかったことを理由として挙げた。
’822特許については,プリアンブルが,クレームボディに規定されている構成(the power distribution module)に対して付加的な構成(the personal recreational vehicle)を 記述している。しかし,付加的な構成を言及するプリアンブルがすべて限定として扱われるわけではない。プリアンブルの文言は電力分配モジュールを定義するクレームボディに対し,文言として先行詞となっておらず,また,発明を完全なものとするのに必要な構成を与えているわけでもなく,全く慣用的である。さらに,ジェプソン形式でクレームが記載される 場合には,プリアンブルの文言はクレームされた発明の範囲も特定するが,A社はジェプソン形式の文言で移行部を記載しておらず,このことは,本来それを使っていれば得られたであろうプリアンブルの限定効果を否定する強い理由になると,CAFCは判断した。
GEP Power Products, Inc.(G社)は,’188特許と’822特許に対してそれぞれIPRを請求し,各々の特許のすべてのクレームが特許法102条または103条に基づき無効であると主張した。A社は,クレームの プリアンブルが発明内容を限定していることを主張した。具体的には,’188特許のクレーム1及び11における「a personal distribution module for a personal recreational vehicle」,並びに’822特許の クレーム1の冒頭の「a personal recreational vehicle」である。
PTABは,いずれの特許においても,「a personal recreational vehicle」というプリアンブルの文言で発明は限定されないと判示した。A社はこの判断を不服とし,CAFCに控訴した。
[CAFCの判断]
CAFCは,プリアンブルの文言が発明を限定しないとするPTABの判断を支持した。CAFCは,プリアンブルは限定として扱われないという原則を示したうえで,以下の様に判断した。
’188特許については,クレームボディにおいて構造的に完全に発明が記述されており,プリアンブルはその使用目的を述べているにすぎないとした。この特定の使用目的が,クレームボディによって規定された内容を超えて何らかのモジュールの構造的要件を課すことをA社は示していない。さらに,審査過程において,A社がクレームの発明を従来技術から差別化する際に,プリアンブルの文言に頼らなかったことを理由として挙げた。
’822特許については,プリアンブルが,クレームボディに規定されている構成(the power distribution module)に対して付加的な構成(the personal recreational vehicle)を 記述している。しかし,付加的な構成を言及するプリアンブルがすべて限定として扱われるわけではない。プリアンブルの文言は電力分配モジュールを定義するクレームボディに対し,文言として先行詞となっておらず,また,発明を完全なものとするのに必要な構成を与えているわけでもなく,全く慣用的である。さらに,ジェプソン形式でクレームが記載される 場合には,プリアンブルの文言はクレームされた発明の範囲も特定するが,A社はジェプソン形式の文言で移行部を記載しておらず,このことは,本来それを使っていれば得られたであろうプリアンブルの限定効果を否定する強い理由になると,CAFCは判断した。
(山田 賢治)
