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専門委員会成果物
原告側の主張するクレーム解釈の誤りと,被告側の主張する自明性判断の誤りの,両方が認められて地裁に差し戻された事例
CAFC判決 2019年3月14日Forest Laboratories, LLC, et al. v. Sigmapharm Laboratories, LLC, et al.
[経緯]
Sigmapharm Laboratories, LLC(S社),Alembic Pharmaceuticals Ltd.(A社),Breckenridge
Pharmaceuticals Inc.(B社)他数社は,アメリカ食品医薬品局に対し,Forest Laboratories, LLC(F社)が販売するSaphrisの後発医薬品を販売するため承認申請をした。Saphrisは舌下に投与する坑精神病医薬であり,asenapine
maleateを含有する。 F社は,後発医薬品がUS特許5,763,476(’476特許)を侵害しているとして地裁に提訴した。
地裁は,’476特許のクレーム4(本クレーム)の記載に関して,「a method for treating tension, excitation, anxiety, and psychotic and schizophrenic disorders.」を 「緊張疾患,興奮疾患,不安疾患,精神病疾患及び統合失調症疾患を治療する方法」と解釈した。そして,A社とB社の後発医薬品は双極性I型障害の躁状態を治療する医薬品であり, 特許の規定の範囲外のものであるため侵害していないと判断した。
また,S社等は,もともとは経口錠剤であったasenapineを他の医薬品の舌下投与又は頬側投与する方法と組み合わせて’476特許に至ることは自明であるから特許は無効であると反論したが,地裁は組み合わせの動機づけがないと判断した。
F社,S社等ともに,CAFCに控訴した。
本クレームにおいては,「psychotic and schizophrenic disorders」の直前に「and」が記載されているので,「psychotic and schizophrenic disorders」は「tension」,「excitation」及び「anxiety」と並列する1つの項目であることを示しており,「tension」,「excitation」及び「anxiety」が「disorder」を修飾しているものではないと判断した。
CAFCは,「excitation」は疾患の名称ではなく症状に言及しているものであると解釈するのが適切であるとして,正しいクレーム文言解釈の下で侵害行為の有無について再検討するよう,地裁に差し戻した。
一方,同じクレームに関する自明性の判断についても,CAFCは,飲み込むことが困難な患者に関する服用の懸念が,経口薬のasenapineを舌下や頬に適用する剤と組み合わせる 動機づけとなるかどうか再検討するよう,地裁に差し戻した。
地裁は,’476特許のクレーム4(本クレーム)の記載に関して,「a method for treating tension, excitation, anxiety, and psychotic and schizophrenic disorders.」を 「緊張疾患,興奮疾患,不安疾患,精神病疾患及び統合失調症疾患を治療する方法」と解釈した。そして,A社とB社の後発医薬品は双極性I型障害の躁状態を治療する医薬品であり, 特許の規定の範囲外のものであるため侵害していないと判断した。
また,S社等は,もともとは経口錠剤であったasenapineを他の医薬品の舌下投与又は頬側投与する方法と組み合わせて’476特許に至ることは自明であるから特許は無効であると反論したが,地裁は組み合わせの動機づけがないと判断した。
F社,S社等ともに,CAFCに控訴した。
[CAFCの判断]
CAFCは,地裁が本クレームの解釈において,「excitation」を「excitation disorder」と限定解釈したことは誤りであると判断した。本クレームにおいては,「psychotic and schizophrenic disorders」の直前に「and」が記載されているので,「psychotic and schizophrenic disorders」は「tension」,「excitation」及び「anxiety」と並列する1つの項目であることを示しており,「tension」,「excitation」及び「anxiety」が「disorder」を修飾しているものではないと判断した。
CAFCは,「excitation」は疾患の名称ではなく症状に言及しているものであると解釈するのが適切であるとして,正しいクレーム文言解釈の下で侵害行為の有無について再検討するよう,地裁に差し戻した。
一方,同じクレームに関する自明性の判断についても,CAFCは,飲み込むことが困難な患者に関する服用の懸念が,経口薬のasenapineを舌下や頬に適用する剤と組み合わせる 動機づけとなるかどうか再検討するよう,地裁に差し戻した。
(大久保 亮成)
