専門委員会成果物

欧州委員会,SEPのライセンス・評価に関する専門家グループ設立を決定

 欧州委員会は,2018年7月5日付けで標準必須特許(SEP:Standard Essential Patent)についての専門家グループを設立する決定を公表した。本決定によれば, 欧州委員会は,欧州連合(EU)の機能に関する条約を考慮し,以下の観点で専門家グループを設立する。
  • 条約173条がEUとその加盟国に課したEU内の産業の競争に必要な条件を確保すること。
  • 2017年11月に欧州委員会が公表したSEPについての声明により,公正,合理的,非差別的な(FRAND:Fair, Reasonable And Non-Discriminatory)ライセンス条件と 知財の健全な評価に関する専門的知識とノウハウを蓄積すること。
  • 優れた事例の集約およびSEPライセンス市場の調査により,SEPライセンスのバランスのとれた枠組みを確保する政策的な措置について欧州委員会へ助言すること。
  • 個人の資格により任命された専門家,SEPのライセンスや評価活動に関与し,ステークホルダにより共有される共通の利益を代表する専門家で構成すること。
 本決定により設立される専門家グループは,さらに以下のように定められている。
 欧州委員会はSEPライセンスおよび評価について専門家グループに諮問することができる。欧州委員会域内市場・産業・起業・中小企業総局(DG GROW)が,諮問の枠組, 期限を設定し,専門家グループはそれに沿って意見,勧告,報告を行う。
 専門家グループは最大15人で構成され,個人の資格により任命される専門家が全体の3分の2以上とする。また,個人の資格により任命される専門家は,独立して 公益のために行動しなければならない。
 メンバーは,公募により選出され,選考結果が公表される。個人の資格により任命される専門家は,利害のコンフリクトを生じる可能性のある事象を全て開示しなければ ならない。利害のコンフリクトに関する評価は,専門家グループについての統一的基準(Horizontal rule)により実施される。任期は2年で更新可能だが,欠格事項が 生じた場合には,DG GROWにより事前に選出された予備のメンバーと自動的に交代する。
 会議準備における専門家グループ内の連絡は電子手段により行われ,DG GROW代表と専門家グループ議長は常時連絡内容を共有する。また原則として,会議は委員会の 敷地内でDG GROWにより決定されたアジェンダに基づき行われる。審議決定結果は,DG GROWとの合意と,専門家グループの過半数の同意により公開決定される。専門家 グループは,意見,提言を総意として採択するが,総意とならない場合はメンバーの過半数の同意により決定される。
 DG GROWは,特定の内容を調査するためサブグループを設置することができる。また,DG GROWは,特定の目的のためにアジェンダの主題に関する専門家を専門家グループや サブグループに招待できる。
 SEPライセンスと評価に関わる組織は,オブザーバー権限が与えられ,オブザーバーの代表者は,専門家グループの議論に参加するが議決権はなく,専門家グループの 助言策定には参加できない。
 アジェンダや議事録などの文書はウェブサイトで確認することができる。

欧州委員会News archive(2018年7月6日)
http://trade.ec.europa.eu/doclib/press/index.cfm?id=1879

欧州委員会の決定(2018年7月5日)
http://ec.europa.eu/transparency/regexpert/index.cfm?do=groupDetail.groupDetailDoc&id=37653&no=1

(参照日:2018年8月30日)

(麦嶋 武士)

Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.