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専門委員会成果物
当事者系レビューにおける先行文献を組み合わせる動機づけの検討が未完了であると判断した事例
CAFC判決 2018年11月14日WhatsApp, Inc., et al. v. TriPlay, Inc.
[経緯]
TriPlay, Inc.(T社)は,メッセージシステムに関する特許8,874,677(’677特許)を有しており,その’677特許は,クロスプラットフォームメッセージ通信,すなわち,
PCと携帯電話端末といった互いに異なる通信能力及び表示能力を有する装置間のメッセージ通信における課題に対処するものである。WhatsApp,
Inc.(W社)は,’677特許に関し,当事者系レビューを請願した。
特許審判部は,文献Coulombe(文献C),文献Bellordre(文献B)及び文献Friedman(文献F)の三つの先行文献を用いて’677特許を検討した。
文献Cは,’677特許と同様の課題を解決するための,’677特許のクレームの二つの要件を除く全ての要件を開示している。その二つの要件とは,文献Bに記載された映像オブジェクトの適合処理と, 文献Fに記載されたクリック可能アイコンである。
文献Bは,文献C及び’677特許と同様の課題を解決するためのものであるが,それらと異なり,映像オブジェクトの適合処理を行う方法で上記課題を解決するものである。
特許審判部は,上記当事者系レビューにおいて,’677特許は非自明であって有効であるという最終決定を出した。また,特許審判部は,’677特許のクレームの要件全てが上記三つの先行文献に 開示されているものの,W社による文献C及び文献Bを組み合わせる動機づけの説明が不十分である,と判断した。そのため,W社は控訴した。
また,CAFCは,文献C,文献B及び文献Fを組み合わせる動機づけがあることをW社が立証できてないというT社の主張を,特許審判部は検討していない,とした。更にCAFCは,W社側の 専門家が文献C及び文献Bに文献Fのクリック可能アイコンを組み合わせると「特に有利」と証言したが,特許審判部はその専門家証言を検討していない,とした。
そのため,CAFCは,特許審判部の最終決定を破棄し,文献C及び文献Bに文献Fのクリック可能アイコンを組み合わせる動機づけの更なる検討のために差し戻した。
特許審判部は,文献Coulombe(文献C),文献Bellordre(文献B)及び文献Friedman(文献F)の三つの先行文献を用いて’677特許を検討した。
文献Cは,’677特許と同様の課題を解決するための,’677特許のクレームの二つの要件を除く全ての要件を開示している。その二つの要件とは,文献Bに記載された映像オブジェクトの適合処理と, 文献Fに記載されたクリック可能アイコンである。
文献Bは,文献C及び’677特許と同様の課題を解決するためのものであるが,それらと異なり,映像オブジェクトの適合処理を行う方法で上記課題を解決するものである。
特許審判部は,上記当事者系レビューにおいて,’677特許は非自明であって有効であるという最終決定を出した。また,特許審判部は,’677特許のクレームの要件全てが上記三つの先行文献に 開示されているものの,W社による文献C及び文献Bを組み合わせる動機づけの説明が不十分である,と判断した。そのため,W社は控訴した。
[CAFCの判断]
W社は,映像がテキストや静止画より強力な媒体となり得る証拠と,映像機能に対するユーザ要望があったことを示す証拠を提出していた。CAFCは,強力な媒体としての映像の利点と, 映像に対するユーザ要望を考慮すると,文献Cに記載のシステムに,文献Bに記載の映像オブジェクトを含めることは常識であるため,特許審判部の上記最終決定はこれらの証拠に支持されていない,と結論づけた。また,CAFCは,文献C,文献B及び文献Fを組み合わせる動機づけがあることをW社が立証できてないというT社の主張を,特許審判部は検討していない,とした。更にCAFCは,W社側の 専門家が文献C及び文献Bに文献Fのクリック可能アイコンを組み合わせると「特に有利」と証言したが,特許審判部はその専門家証言を検討していない,とした。
そのため,CAFCは,特許審判部の最終決定を破棄し,文献C及び文献Bに文献Fのクリック可能アイコンを組み合わせる動機づけの更なる検討のために差し戻した。
(大沢 真一)