専門委員会成果物

ANDA訴訟において地裁の自明性判断に関する妥当性が支持され特許無効となった事例

CAFC判決 2018年10月12日
Teva Pharmaceuticals USA, Inc. et al. v. Sandoz Inc., et al.

[経緯]

 Teva Pharmaceuticals USA, Inc., et al.(T社)は多発性硬化症治療薬であるグラチマー酢酸塩(Glatiramer acetate(GA))(製品名:COPAXONE®)に関する 特許8,232,250等4件の特許(’250特許等)の実施許諾者であり,Sandoz, Inc., et al.(S社)がCOPAXONE®のジェネリック品の製造・販売承認申請のために医薬品簡略承認申請 (ANDA)を提出したため,T社は特許侵害を理由として地裁に提訴した。
 地裁は,’250特許等は,自明性に基づき無効であるとし,S社の実施行為が非侵害であると結論付けた。これを受けて,T社は,地裁判決を不服とし,CAFCへ控訴した。  

[CAFCの判断]

 CAFCでの審理における主論点は,自明性の判断であり,(1)40mg GAの1週3回の投与方法,(2)患者の忍容性の改善及び副作用頻度の低減,及び(3)注射部位における 副反応の重症度の低減,の3項目に関してその自明性が判断された。
 先ず(1)に関して,T社は,地裁判決は,不適切な「obvious to try」分析及び後知恵に依拠しており,又,自明性分析が発明全体でなく個々のクレーム要素について行われている。 更に,過去のCAFC判決(Cyclobenzaprine Hydrochloride Extended-Release Capsule Patent Litigation,676 F.3d 1063(Fed. Cir. 2012))に合致していないと主張した。しかし, CAFCは,地裁が出した結論には,合理的かつ明確な誤りが無いとして,地裁の自明性判断を支持した。
 次に,(2)についてT社は,当業者は先行技術から,既知の投与方法(20mg GA/日)と比較して,’250特許等のクレームされた投与方法から,患者の忍容性の改善及び 副作用頻度の低減を,期待しないと主張した。しかし,CAFCは,先行技術文献からの地裁の調査結果には明確な誤りが無いとして,地裁の自明性判断を支持した。又,T社は, 地裁がT社の臨床試験プロトコルに依拠して判断を誤ったと主張したが,CAFCは,地裁がGAの低頻度投与の臨床試験へ依拠したことは,当業者が先行技術をどのように理解するかを 確認しただけに過ぎず,誤ったものでは無いとして,その主張を退けた。
 最後に,(3)についてT社は,注射部位反応の頻度低減の証明から注射部位反応の重症度低減の証明はできないにも関わらず,地裁は「重症度」と「頻度」を誤って一緒に 扱ったと主張した。しかし,CAFCは,「重症度」と「頻度」の概念が異なることには同意するが,特定の例における証人証言から,それら各々の関連性が裏付けられたとして, 地裁の判断が誤っていないと結論した。

(内田 秀春)

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