専門委員会成果物

技術的課題に対して具体的な解決手段を提供している場合は特許適格性を有するとした事例

CAFC判決 2018年10月9日
Data Engine Technologies LLC v. Google LLC

[経緯]

 Data Engine Technologies LLC(D社)はタブを使用して複数の異なるスプレッドシートを有し,ユーザーからの指示を受けてスプレッドシートを表示する特許5,590,259 (’259特許)とユーザーによるスプレッドシートの変更に追従して対応する特許5,303,146(’146特許)とを保有している。D社はGoogle LLC(G社)に対してこれらの特許を 侵害しているとして訴訟を提起した。
 地裁では,’259特許のクレーム12は抽象的なアイデアに直結しインベンティブコンプセトが存在せず,特許適格性を有しないと結論づけた。また,同様に’146特許も 特許適格性を有しないと結論づけた。この判決を不服としてD社はCAFCに控訴した。    

[CAFCの判断]

 CAFCは,’259特許のクレーム12は,明細書の記載を参酌すると全体として抽象的なアイデアではなく,三次元のスプレッドシートをナビゲートするための具体的な方法に 直結しているとした。
 そして,現在ではスプレッドシートは普及し当たり前のものとなったが,クレームされた発明の最初の商業的実施形態である商品は,三次元のスプレッドシートに 革命をもたらしたものと高く評価されており,これら’259特許は,先行技術のスプレッドシートにおける技術的課題に対する具体的な解決策を提供するものであると判示した。
 さらに’259特許のクレームはスプレッドシートページ間をナビゲートするための具体的なステップを記載し,スプレッドシートページのタブを表示し,タブに対してユーザーが 設定可能なラベルを許可する必要があり,これはコンピュータ特有の技術を使用してスプレッドシートをナビゲートするための具体的なインタフェースと実装が必要であった 事実であるとCAFCは判示した。以上の理由により,’259特許のクレーム12は特許適格性を有すると判断された。
 一方,’146特許については,CAFCはこれらのクレームは,’259特許とは異なり,認識されたデータを収集し,認識し,メモリに記憶するという抽象的なアイデアに向け られており,Alice最高裁判決のステップ2におけるインベンティブコンセプトが存在しないため,特許適格性を有しないと判示した。

(高見 亮次)

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