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専門委員会成果物
裁判所の決定により非自発的に訴状が却下された場合であっても,特許法315条(b)が規定するIPRの請願に関する期間制限が適用されると判断した事例
CAFC判決 2018年9月28日Bennett Regulator Guards, Inc. v. Atlanta Gas Light Co.
[経緯]
Bennett Regulator Guards, Inc.(B社)は,2012年7月18日付で,氷結防止装置に関する特許5,810,029(’029特許)の侵害を理由に,Atlanta Gas Light Co.
(A社)に対して訴状を送達した。地裁は,A社による訴状却下の申立を認め,B社の訴状を再提訴可能な形で却下した。
その後A社は,2015年2月27日付で,B社の保有する’029特許に対して当事者系レビュー(IPR)の請願を行った。B社は,A社による請願は,特許法315条(b)の 「IPRは,特許侵害を主張する訴状を送達された日から1年より後に提出された場合は開始することができない」との規定に従い禁止されるべきものであると主張した。
特許審判部(PTAB)は,地裁による訴訟却下は訴状の送達を無効化するものであるから,A社の請願は特許法315条(b)の期間制限によって禁止されるものでは ないとしてB社の主張を認めず,IPR手続の開始を決定した。PTABは,最終決定書において,B社の全てのクレームが無効であると判断した。
A社はPTABの決定を不服とし,CAFCに控訴した。
具体的には,CAFCは,Click-to-Call判決(Click-to-Call Techs., LP v. Ingenio, Inc., 899 F.3d 1321(Fed. Cir. 2018))を引用し,侵害を主張する訴状の送達は, その後の訴状の成否にかかわらず,特許法315条(b)の期間制限と明確な関係を有するものであると述べた。
Click-to-Call判決と本事例との違いは,Click-to-Call判決では訴状が再提訴可能な形で「自発的に」取下げられたものである一方,本事例では被疑侵害者であるA社の 申立に基づき,再提訴可能な形で「非自発的」に訴状が却下された点にある。CAFCは,条文が「送達」行為が特許法315条(b)における期間制限の始期を規定すると明瞭に 述べており,自発的に取下げられた訴状に関する何らの例外規定も存在しないことから,非自発的に訴状が却下された場合についても特許法315条(b)の期間制限の例外と はならない旨判示した。
その後A社は,2015年2月27日付で,B社の保有する’029特許に対して当事者系レビュー(IPR)の請願を行った。B社は,A社による請願は,特許法315条(b)の 「IPRは,特許侵害を主張する訴状を送達された日から1年より後に提出された場合は開始することができない」との規定に従い禁止されるべきものであると主張した。
特許審判部(PTAB)は,地裁による訴訟却下は訴状の送達を無効化するものであるから,A社の請願は特許法315条(b)の期間制限によって禁止されるものでは ないとしてB社の主張を認めず,IPR手続の開始を決定した。PTABは,最終決定書において,B社の全てのクレームが無効であると判断した。
A社はPTABの決定を不服とし,CAFCに控訴した。
[CAFCの判断]
CAFCは,A社は315条(b)の期間制限後18ヵ月以上経過した後にIPRの請願を行っていることから,PTABはIPR手続を開始する権限を有していないとして,PTABの最終決定書を破棄し, IPRの請願を却下するよう地裁に差戻した。具体的には,CAFCは,Click-to-Call判決(Click-to-Call Techs., LP v. Ingenio, Inc., 899 F.3d 1321(Fed. Cir. 2018))を引用し,侵害を主張する訴状の送達は, その後の訴状の成否にかかわらず,特許法315条(b)の期間制限と明確な関係を有するものであると述べた。
Click-to-Call判決と本事例との違いは,Click-to-Call判決では訴状が再提訴可能な形で「自発的に」取下げられたものである一方,本事例では被疑侵害者であるA社の 申立に基づき,再提訴可能な形で「非自発的」に訴状が却下された点にある。CAFCは,条文が「送達」行為が特許法315条(b)における期間制限の始期を規定すると明瞭に 述べており,自発的に取下げられた訴状に関する何らの例外規定も存在しないことから,非自発的に訴状が却下された場合についても特許法315条(b)の期間制限の例外と はならない旨判示した。
(三宅 祐輔)
