- トップ
- 協会活動
- 専門委員会成果物
- 外国特許ニュース(2018)
- 12月号 米国(1)
専門委員会成果物
侵害訴訟の訴状が送達された後に訴えが取り下げられても,IPR適時性に関する特許法315条(b)が適用されると判示した事例
CAFC判決 2018年8月16日Luminara Worldwide, LLC v. Iancu, Director USPTO
[経緯]
無焔キャンドルに係る米国特許8,070,319(’319特許)についての専用権者が,その専用権を侵害するとしてShenzhen Liown Eectronics Co., Ltd.(S社)
を地裁に訴えた(以下,先の訴えという)。訴状の送達が確認された後で,専用権者は,S社と合意のうえで,先の訴えを取り下げた。
その後,Luminara Worldwide, LLC(L社)が’319特許を譲り受けた。そして,L社は,’319特許を侵害するとしてS社を地裁に訴えた(以下,後の訴えという)。
後の訴えを受けたS社は,’319特許について当事者系レビュー(Inter partes review(IPR))を,後の訴えに係る訴状の送達日から1年以内,且つ,先の訴えに 係る訴状の送達日からは1年を超えた時期に請願した。
L社は,特許侵害訴訟との関係におけるIPR請願の時期的要件を規定する特許法315条(b)が適用されるから,IPR手続の開始が決定されるべきでない旨を主張した。 しかし,特許審判部(PTAB)は,IPR請願は特許法315条(b)に規定する時期的要件を満たすものと判断し(適時性判断)IPR手続の開始を決定した。その理由として, PTABは,先の訴えの取下げは「不利益とならない自発的な取下げ(voluntary dismissals without prejudice)」に該当し,当該取下げの効果は「訴えがされなかった」 とみなされること,また,「訴えがされなかった」とみなされた訴えに特許法315条(b)を適用する規定も趣旨もないことを挙げた。
そのうえで,PTABは,’319特許のクレームが先行文献から自明であり特許性を有すると判断した(クレームの自明性判断)。
特許権者であるL社は,IPR請願の適時性判断と,クレームの自明性判断と,を不服として,CAFCに控訴した。
本ケースでは,S社による請願書の提出時期が,先の訴えに係る訴状の送達日から1年を超えていた。CAFCは,PTABが,特許法315条(b)に違反して 本IPRの審理を開始したと指摘し,これを理由に,本IPRに係る請願書の却下のために審理をPTABに差し戻した。
一方で,CAFCは,先行文献からクレームが自明であるとしたPTABの判断を支持した。
その後,Luminara Worldwide, LLC(L社)が’319特許を譲り受けた。そして,L社は,’319特許を侵害するとしてS社を地裁に訴えた(以下,後の訴えという)。
後の訴えを受けたS社は,’319特許について当事者系レビュー(Inter partes review(IPR))を,後の訴えに係る訴状の送達日から1年以内,且つ,先の訴えに 係る訴状の送達日からは1年を超えた時期に請願した。
L社は,特許侵害訴訟との関係におけるIPR請願の時期的要件を規定する特許法315条(b)が適用されるから,IPR手続の開始が決定されるべきでない旨を主張した。 しかし,特許審判部(PTAB)は,IPR請願は特許法315条(b)に規定する時期的要件を満たすものと判断し(適時性判断)IPR手続の開始を決定した。その理由として, PTABは,先の訴えの取下げは「不利益とならない自発的な取下げ(voluntary dismissals without prejudice)」に該当し,当該取下げの効果は「訴えがされなかった」 とみなされること,また,「訴えがされなかった」とみなされた訴えに特許法315条(b)を適用する規定も趣旨もないことを挙げた。
そのうえで,PTABは,’319特許のクレームが先行文献から自明であり特許性を有すると判断した(クレームの自明性判断)。
特許権者であるL社は,IPR請願の適時性判断と,クレームの自明性判断と,を不服として,CAFCに控訴した。
[CAFCの判断]
CAFCは,先のCAFC判決における大法廷による審議(Wi-Fi One, LLC v. Broadcom Corp., 878 F.3d 1364, 136)に基づき,IPR請願書の適時性の争いも裁判所の 審理対象になり得ると判示した。そのうえで,CAFCは,侵害訴訟の訴状がIPRの請願者に送達された後で,その訴えが不利益とならない自発的な取下げにより 取下げられた場合に,特許法315条(b)の規定が適用されると判断した。なお,この判断は,本判決と同日付けの他のCAFC判決における大法廷による審議 (Click-To-Call Technologies, LP v. Ingenio, Inc., No.15-1242(Fed. Cir. Aug.16 2018))と同じである。本ケースでは,S社による請願書の提出時期が,先の訴えに係る訴状の送達日から1年を超えていた。CAFCは,PTABが,特許法315条(b)に違反して 本IPRの審理を開始したと指摘し,これを理由に,本IPRに係る請願書の却下のために審理をPTABに差し戻した。
一方で,CAFCは,先行文献からクレームが自明であるとしたPTABの判断を支持した。
(山口 薫)