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専門委員会成果物
発明にとって,重要ではなく,本質的ではなく,かつ不可欠ではない明細書中の内容をクレーム解釈にとりいれるべきではないとして,地裁の解釈をCAFCが誤りであると判断した事例
CAFC判決 2018年7月16日Blackbird Tech LLC, et al. v. ELB Electronics, Inc., et al.
[経緯]
Blackbird Tech LLC(B社)は,エネルギー効率を改善する照明装置に関する特許7,086,747(’747特許)を保有している。この’747特許では,
既存の照明装置を改装する実施形態が明細書中に開示されており,その内容がクレーム12に記載されている。
B社はこの’747特許のクレーム12を侵害しているとしてELB Electronics, Inc.(E社)を相手取って,地裁に特許権侵害訴訟を提起した。争点は,クレームに明記された 「取付面(attachment surface)」の解釈であった。B社は,これを「照明面が固定されるハウジングの層」であると主張した。一方,E社は,「バラストカバー(ballast cover) に固定され,照明面が固定されるハウジングの層」であると主張した。これらに対して地裁は,「取付面」を「バラストカバーに固定されるハウジングの層」であると解釈し,E社は非侵害であると判決を下した。
B社はこの判決を不服として,CAFCに控訴した。
CAFCは,「取付面」の解釈にあたり,バラストカバーに固定されることは,クレーム12の文言そのものからは要求されないと判断した。また,CAFCは,明細書中で,「取付面」がバラストカバーに固定される形態は開示されているが,この要件が重要であるとは明細書及び審査経過を参酌しても何ら示唆されておらず,当該要件が本発明にとって,重要で,本質的で,かつ不可欠であるとの証拠はないため,当該要件をクレーム解釈にとりいれるべきではないと判断した。さらに,CAFCの判断では,「取付面」がバラストカバーに固定されるという要件は,出願時のクレーム12には明記されていたが審査の過程で明示的に削除され,クレーム12が「取付面が照明面に固定される」に補正された点も考慮された。
この結果,CAFCは,B社のクレーム解釈を採用し,非侵害とする原判決を破棄し,地裁に差し戻した。
B社はこの’747特許のクレーム12を侵害しているとしてELB Electronics, Inc.(E社)を相手取って,地裁に特許権侵害訴訟を提起した。争点は,クレームに明記された 「取付面(attachment surface)」の解釈であった。B社は,これを「照明面が固定されるハウジングの層」であると主張した。一方,E社は,「バラストカバー(ballast cover) に固定され,照明面が固定されるハウジングの層」であると主張した。これらに対して地裁は,「取付面」を「バラストカバーに固定されるハウジングの層」であると解釈し,E社は非侵害であると判決を下した。
B社はこの判決を不服として,CAFCに控訴した。
[CAFCの判断]
CAFCは,地裁のクレーム解釈は誤っていたと結論付けた。CAFCは,「取付面」の解釈にあたり,バラストカバーに固定されることは,クレーム12の文言そのものからは要求されないと判断した。また,CAFCは,明細書中で,「取付面」がバラストカバーに固定される形態は開示されているが,この要件が重要であるとは明細書及び審査経過を参酌しても何ら示唆されておらず,当該要件が本発明にとって,重要で,本質的で,かつ不可欠であるとの証拠はないため,当該要件をクレーム解釈にとりいれるべきではないと判断した。さらに,CAFCの判断では,「取付面」がバラストカバーに固定されるという要件は,出願時のクレーム12には明記されていたが審査の過程で明示的に削除され,クレーム12が「取付面が照明面に固定される」に補正された点も考慮された。
この結果,CAFCは,B社のクレーム解釈を採用し,非侵害とする原判決を破棄し,地裁に差し戻した。
(山田 賢治)
