専門委員会成果物
クレームに記載された薬剤の有効成分及び薬剤の摂取方法が先行文献に記載された有効成分及び摂取方法の内容に含まれていても，無効とならなかった事例
CAFC判決 2018年６月28日Impax Laboratries Inc., et al. v. Lannett Holdings Inc., et al.
［経緯］
AstraZeneca（Ａ社）は，鼻腔内投与用ゾルミトリプタンの薬剤（Zomig®）に関する有効成分及び薬剤の摂取方法をクレームした特許6,760,237（’237特許）及び特許7,220,767
（’767特許）を保有していた。2012年にＡ社とImpax Laboratries Inc.は薬剤Zomig®を使った製品の販売，特許ライセンス，開発及び供給契約の締結を行った。
2014年，Lannett Holdings Inc.（Ｌ社）は，鼻腔投与用薬剤Zomig®の後発医薬品を作製し，医薬品簡略申請（ANDA）を行った旨と，’237特許及び’767特許が無効または侵害しないとする パラグラフIV証明書を作成した旨をＡ社に通知した。これを受けて，Ａ社は，Ｌ社に対し’237特許及び’767特許の侵害訴訟をデラウェア州地裁に提起した。
2017年３月，地裁は，Ｌ社が明白かつ確信を持つに足る証拠をもって対象クレームが無効であることを証明していない旨の決定を下した。また，地裁は，’237特許及び’767特許の全ての 限定が先行文献に開示されているわけではないと判断した。非自明性の結論に至るにあたり，主な理由として以下の� 銑�を挙げた。�．哨襯潺肇螢廛織鵑呂修貅�体ではなく，有効な代謝物を 通じで活性化されることが知られているので，先行文献は，ゾルミトリプタンを鼻腔内に投与するための薬剤に用いることに対し，阻害要因を含んでいる。�∪莵塋幻イ蓮い修了�点において， ゾルミトリプタン自体がゾルミトリプタンの活性代謝物と比較して有効であることを示していない。�Ｅ�業者がゾルミトリプタンの鼻腔投与製剤を作ることに対して，成功の合理的な期待に つながる動機付けは示されていない。
Ｌ社は，この判決を不服として，CAFCに控訴した。
これに対し，CAFCは，カプリルカプロイマクロゴールを使用した活性成分の一般的な摂取方法（口用，鼻腔用，喉頭用のうち鼻腔用が望ましいとする方法）が開示されているに過ぎないから， 先行文献全体としてはゾルミトリプタンの鼻腔内薬剤についての内容ではないとした。また，有効成分として先行文献に記載されている例はIS159（トリプタミン-5-O-カルボキシメチル-チロ シル-グリセリル）であって，ゾルミトリプタンではない，とし，CAFCは，Ｌ社の無効主張に対して地裁の判決を覆すような明白かつ確信を持つに足る証拠は示されていないとし，地裁の非自明性の 判断を支持する，と結論付けた。
2014年，Lannett Holdings Inc.（Ｌ社）は，鼻腔投与用薬剤Zomig®の後発医薬品を作製し，医薬品簡略申請（ANDA）を行った旨と，’237特許及び’767特許が無効または侵害しないとする パラグラフIV証明書を作成した旨をＡ社に通知した。これを受けて，Ａ社は，Ｌ社に対し’237特許及び’767特許の侵害訴訟をデラウェア州地裁に提起した。
2017年３月，地裁は，Ｌ社が明白かつ確信を持つに足る証拠をもって対象クレームが無効であることを証明していない旨の決定を下した。また，地裁は，’237特許及び’767特許の全ての 限定が先行文献に開示されているわけではないと判断した。非自明性の結論に至るにあたり，主な理由として以下の� 銑�を挙げた。�．哨襯潺肇螢廛織鵑呂修貅�体ではなく，有効な代謝物を 通じで活性化されることが知られているので，先行文献は，ゾルミトリプタンを鼻腔内に投与するための薬剤に用いることに対し，阻害要因を含んでいる。�∪莵塋幻イ蓮い修了�点において， ゾルミトリプタン自体がゾルミトリプタンの活性代謝物と比較して有効であることを示していない。�Ｅ�業者がゾルミトリプタンの鼻腔投与製剤を作ることに対して，成功の合理的な期待に つながる動機付けは示されていない。
Ｌ社は，この判決を不服として，CAFCに控訴した。
［CAFCの判断］
Ｌ社は，先行文献には，鼻腔用スプレーにゾルミトリプタンの薬剤が使用されることが明確に記載されており，地裁は先行文献の内容全体で考慮していないと主張した。これに対し，CAFCは，カプリルカプロイマクロゴールを使用した活性成分の一般的な摂取方法（口用，鼻腔用，喉頭用のうち鼻腔用が望ましいとする方法）が開示されているに過ぎないから， 先行文献全体としてはゾルミトリプタンの鼻腔内薬剤についての内容ではないとした。また，有効成分として先行文献に記載されている例はIS159（トリプタミン-5-O-カルボキシメチル-チロ シル-グリセリル）であって，ゾルミトリプタンではない，とし，CAFCは，Ｌ社の無効主張に対して地裁の判決を覆すような明白かつ確信を持つに足る証拠は示されていないとし，地裁の非自明性の 判断を支持する，と結論付けた。
（大久保 亮成）
