専門委員会成果物
バイオシミラー関連特許訴訟に於いて州法に基づく救済は禁止と判断した事例
CAFC判決 2017年12月14日Amgen Inc. et al. v. Sandoz Inc.
[経緯]
Amgen Inc.(A社)は,顆粒球コロニー形成刺激因子製剤(G-CSF製剤)であるNeupogen®を1991年から販売している。Sandoz
Inc.(S社)は,2014年5月に,Neupogen®のバイオ後続品 (バイオシミラー)であるZarxio®の承認申請にあたり,患者保護及び医療費負担適正化法(BPCIA)の下に簡略生物学的製剤承認申請(aBLA)を提出した。しかし,S社はBPCIAにおけるパテントダンスに従わず,
A社にaBLAを通知せずして申請手続を進め,FDAの審査受理通知受領後に,A社に上市通知をした。これを受け,A社は,S社がU.S. Patent
6,162,427を侵害しているとして,カルフォルニア地裁に提訴をした。 2015年にカルフォルニア州地裁判決(N. D. Cal. Mar.
19, 2015)が出た後,続くCAFC判決(794F. 3d 1347(Fed. Cir. 2015)),更に最高裁判決(137 S. Ct.
1664(2017))と審理された。CAFCへ差戻す旨の 最高裁判決を受けて,CAFCで審理され,この度,その判決が下りた。
先ず,第1の争点についてCAFCは連邦法専占の問題は,BPCIAの解釈に関して重要な問題であるとして最初に取り組んだ。CAFCはS社が審理応答での防衛として連邦法専占を順守しており,又, S社は本問題について下級審に差し戻した上で審理することもできたことを述べた上で,S社が連邦法専占の主張を放棄しておらず,州法に基づくA社の主張が連邦法に基づき排除されると裁定をした。
続いて,第2の争点について,CAFCは,州はバイオシミラー特許訴訟を占有しておらず,特許は連邦法下に存在し,特許訴訟の専属管轄権はCAFCにあると述べた。続いて,パテントダンスには, 情報交換の為の完全な統治基準があり,不履行に対する罰則もあることから,BPCIAは「州が補完する余地はない」と述べた。連邦法と州法との救済が違う大きな理由は,フィールド専占であり, 連邦法はバイオシミラー特許訴訟を完全に専占する。従って,A社が主張した差止め救済と損害救済は,議会が採択している枠組みに矛盾している為,連邦法下では認められず, A社の州法による救済の主張は禁止されると裁定した。
最後に,第3の争点について,CAFCはBPCIAを遵守しなかったことが違法行為であるか否かについては,裁定しなかった。
[CAFCの判断]
A社が主張した争点は,次の3点であった。第1の争点は,S社が,州法の請求に対して連邦法専占(連邦法に矛盾する州法を無効にすること)を追及することなく議論を放棄したこと,続いて, 第2の争点は,BPCIA§262(1)(2)(A)のパテントダンスの遵守を怠ったために,BPCIAは,州法の救済を専占しなかった,最後に,第3の争点は,S社が,BPCIA §262(1)(2)(A)を遵守しなかったこと 自体が,州法下において違法行為である。先ず,第1の争点についてCAFCは連邦法専占の問題は,BPCIAの解釈に関して重要な問題であるとして最初に取り組んだ。CAFCはS社が審理応答での防衛として連邦法専占を順守しており,又, S社は本問題について下級審に差し戻した上で審理することもできたことを述べた上で,S社が連邦法専占の主張を放棄しておらず,州法に基づくA社の主張が連邦法に基づき排除されると裁定をした。
続いて,第2の争点について,CAFCは,州はバイオシミラー特許訴訟を占有しておらず,特許は連邦法下に存在し,特許訴訟の専属管轄権はCAFCにあると述べた。続いて,パテントダンスには, 情報交換の為の完全な統治基準があり,不履行に対する罰則もあることから,BPCIAは「州が補完する余地はない」と述べた。連邦法と州法との救済が違う大きな理由は,フィールド専占であり, 連邦法はバイオシミラー特許訴訟を完全に専占する。従って,A社が主張した差止め救済と損害救済は,議会が採択している枠組みに矛盾している為,連邦法下では認められず, A社の州法による救済の主張は禁止されると裁定した。
最後に,第3の争点について,CAFCはBPCIAを遵守しなかったことが違法行為であるか否かについては,裁定しなかった。
(内田 秀春)