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〈インドネシア〉特許実施義務に関する施行規則を公布

 インドネシア法務人権省は,インドネシア特許法 2016年法律第13号改正第20条の履行要件明確化のため,特許実施義務に関する施行規則(Regulation No. 15 of 2018)1)を2018年7月11日に公布した。
 本件については,正確な情報が少なく,不透明な部分も多いため,今後の運用を注視する必要がある。
背景
 2016年に施行された改正特許法(新法)の第20条において,技術移転,投資,雇用創出の促進を目的として旧法に規定されていた実施義務の例外規定(旧法第17条(2))が削除され, 新法第132条の特許取消理由に実施義務違反が新たに追加された(新法第132条(1)(e))2)。
 この改正により旧法から存在する不実施による強制実施権の根拠(新法第82条の(1)の(a))と合わせて,特許権者は特許を受けた物を製造または特許を受けた方法を使用する 義務(実施義務)が強化されることとなった。
 この改正内容に対して,各国の政府や団体から反対意見が表明されていた。
特許実施義務に関する施行規則
 本施行規則により特許権者は発明の実施免除を申請することが可能となった。
 この実施免除の申請は,法務人権省に対して不実施の理由を添えて申請書を提出することによって可能となる。申請することにより決定日から最長で5年間の免除期間が与えられ, 当免除期間をさらに超える延期は,再度理由書の提出により許可される可能性があるとされている。
 最初の免除申請は,特許付与の日から3年以内に法務人権省に対して行わなければならない。
備考
 発表された本施行規則において,実施免除が許可されうる不実施の理由についてどのようなものが該当するのか,などは明確になっておらず,免除期間の起点日についても 「決定日から」とされているが具体的にどの決定日を指すのかが,不明確である。
 又,特許発明が実施されている証拠を,インドネシア特許庁または法務人権省に定期的に提供する必要性については記載されていない。
インドネシア特許法2016年法律第13号改正(特許実施義務関連規定抜粋)3)
  • 第20条
    (1)特許権者は,インドネシア共和国内において特許を受けた物を製造し又は方法を使用する義務を負う。
    (2)(1)項における物の製造又は方法の使用は,技術移転,投資の吸収及び/又は雇用の場の提供を支援しなければならない。
  • 第82条
    (1)強制実施権は特許を実施するために,以下を根拠とする申請に基づき大臣決定に基づき与えられる:
    (a)特許権者が,第20条(1)項におけるインドネシアにおいて商品の製造又は方法の使用をする義務を特許付与後36か月以内に果たさない;
  • 第132条
    (1)第130条(b)号の裁判所決定に基づく特許の取消は,以下の場合になされる:
    (e)特許権者が第20条の規定に違反する場合

(参考ウェブサイト)

1)http://dgip.go.id/images/ki-images/pdf-files/uu-pp/permenkumham-paten-15-2018.pdf

2)http://en.dgip.go.id/images/ki-images/pdf-files/uu_pp1/UU-nomor-13-tahun-2016-tentang-paten.pdf

3)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/idn/ip/pdf/tokkyo_2016.pdf

(参照日:2018年12月10日)

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