外国特許ニュース

〈中国〉一部の新薬について最長5年の特許保護期間の延長を認める方向へ

 本年4月12日に,李克強中国国務院総理は,国務院常務会議を主宰し,医療や健康に関する幾つかの事項について決定し,これを発表した。
 インターネットによる医療や健康への活用(例えば,インターネットによる問診予約,検診結果の確認,慢性病などの再診などを行うサービス)の発展や,医薬品コストの軽減を図る事を目的としており, 特許の保護期間延長を含む国務院常務会議にて決定された5つの事項について紹介する。
  1. 2018年5月1日より,抗がん剤の範囲に含まれる薬,抗がん作用を持つアルカロイド類薬物及び中成薬(日本でいうところの漢方薬)を輸入する際の関税を無くす。実際に輸入する全ての 抗がん剤の免税を実現する。また,抗がん薬の製造,輸入における増値税(日本でいうところの消費税に相当する付加価値税)を大幅に低減する。
  2. 政府による医薬品の集中調達と輸入を行うことにより,中間コストを低下させる。特にニーズの高い抗がん剤を医療保険リストに収載する。
  3. 新薬の輸入を加速させる。臨床試験申請の制度について,承認制度から変更する。輸入化学製剤に対して,強制的にロット毎に中国での検査はせず,企業の試験結果だけで通関できるようになる。
  4. 知的財産権の保護を強化する。新薬について,最大6年間のデータ保護期間を設定する。保護期間以内に,同じ製品の市販を承認しない。中国と海外で市販を同時に申請する新薬について, 最大5年間の特許保護期間を設定する。
  5. 品質監督管理を強化し,輸入医薬品の海外製造現場に対する検査を強化して,偽薬を厳格に取り締まる。
    幾つかの決定事項については,今後さらなる法整備が新たに必要と考えられるが,さまざまな関係者に対して大きな恩恵をもたらす決定であり,政府による推進,実現が期待される。
    これまでの医薬品分野における特許保護期間については,非常に長くかかる試験及び実施承認プロセスにより,製造・販売の許可後に残される特許保護期間が僅かであるケースが少なからず生じていた。 そのため,先発医薬品メーカーは新薬開発における十分な利益を得ることが出来ず,イノベーションの機会が損なわれていた。
    今回の決定では,医薬品分野におけるイノベーションを奨励する一つの手段として,特許保護期間の延長が認められるという大きな変化がもたらされた。今後の法整備の時期も未定であり, 且つ対象が「海外と中国の同時申請の場合」との一部に限られるものではあるが,今後の行方に注視する必要がある。

(参考ウェブサイト)

(参照日:2018年5月25日)

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