「知財管理」誌
Vol.63 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 63巻(2013年) / 8号 / 1209頁 |
論文区分 | 論説 |
論文名 | ポリエステル事件再考─日本における利用論と均等論の来歴と今後─ |
著者 | 大谷 寛 |
抄録 | 現在、特許権侵害訴訟における侵害論は、文言侵害か均等侵害かの二分法が基調をなして いる。リパーゼ事件によって、記載された文言に忠実にクレームを解釈すべきことが明らかとなり、 そして、ボールスプライン事件以後、文言侵害を構成しないときには残された問題は均等侵害の成否 のみであると考えられている。しかしながら、均等侵害が我が国において確立するまでの歩みを振り 返れば、均等論とは別個の法理として、特許法72条の「利用」を根拠とした侵害論が我が国の特許法 体系に組み込まれていることが分かる。上述の二分法は、この利用論に基づく権利侵害が、すべて均 等侵害ないし文言侵害の問題に帰着するのであれば妥当であるが、そうでなければ、今日においても 利用論により処理すべき事案が残されていることとなる。本論説では、イ号がほぼ同一の事案で大阪 地裁と京都地裁で利用の成否につき判断が分かれたポリエステル事件の再考を契機として、今日にお ける利用論の位置付けを整理し、今後の指針としたい。 |
本文PDF |