「知財管理」誌

Vol.63 記事詳細

掲載巻(発行年) / 号 / 頁 63巻(2013年) / 2号 / 235頁
論文区分 判例研究(続・No.13)
論文名 (続・No.13) 小売等役務商標の独占権の及ぶ範囲
著者 外川英明
抄録 本件は、商標法平成18年改正で導入された「小
売等役務商標」に対する、商品商標を引用した
無効審判不成立審決の審決取消請求事件であ
る。
知的財産高等裁判所は、結局、本件商標をそ
の指定役務に使用しても出所について混同を生
ずるおそれはないとして商標法4条1項15号に
該当しない旨判示し、請求を棄却した。本件判
決における理由づけは、審決と相違し、小売等
役務商標の独占権の及ぶ範囲からのアプローチ
であるところに特徴がある。
すなわち、総合小売等役務における独占権の
及ぶ範囲は、合理的な取引通念に照らし、「衣
料品、飲食料品及び生活用品に係る各種商品」
を「一括して取り扱う」小売等の業務との間で、
目的と手段等の関係にあることが認められる役
務態様に限定されると解するのが相当と述べ、
また、特定小売等役務における独占権の及ぶ範
囲は、合理的な取引通念に照らし、特定された
取扱商品に係る小売等の業務との間で、目的と
手段等の関係にあることが認められる役務態様
に限定されると解するのが相当であるとしたの
である。
したがって、本件判決は、商標法4条1項15号に関する無効審判事件というだけではなく、
小売等役務商標の独占権の及ぶ範囲を限定的に
解釈すべきとする知的財産高等裁判所の見解が
示されたものとして注目すべきものである。
<参照条文> 商標法4条1項15号、19号、
25条、37条等
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