「知財管理」誌

Vol.63 記事詳細

掲載巻(発行年) / 号 / 頁 63巻(2013年) / 1号 / 91頁
論文区分 判例研究(続・No.12)
論文名 (続・No.12) 著作権法65条3項にいう「正当な理由」
著者 村上画里
抄録 本稿は、共同著作物の著作権を相続した相続
人同士で共有する著作権の行使を拒絶するに当
たり、著作権法65条3項にいう正当な理由の存
否について争われた事案について検討するもの
である。裁判所が判断した事項のうち、著作物
の内容面に関する事情と出版に関する経済的な
事情のそれぞれについて、正当な理由となりう
るかが検討され、本件においてはいずれについ
ても正当な理由はないとの判断が示された。と
りわけ、本判決において検討された正当理由の
うち、経済的要素が正当理由となりうるとした
点は、従来の裁判例には見られたかったもので
あり、今後の裁判例に対して示唆を与えるもの
と思われる。
共有者の人的関係の結びつきが弱い、相続人
間で著作権が共有される本件のような事例にお
いて、正当な理由がないと判断し、権利行使を
認めた結論は支持しうるものである。もっとも、
相続人間において著作権が共有される場面にお
いて、正当な理由の判断基準は、従来の裁判例
に見られる基準と同様に考えることができるの
か否か、本判決は言及しておらず、その点は、
今後も検討を重ねる必要があるだろう。
本文PDF
Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.