「知財管理」誌
Vol.61 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 61巻(2011年) / 9号 / 1301頁 |
論文区分 | 論説 |
論文名 | 判例の規範定立機能について |
著者 | 三村 量一 |
抄録 | 裁判所の役割は紛争の解決であるが、判決において示された判断は当該事案の紛争解決にとどまらず、後の裁判の先例として同種事案についての法的判断の指針を示すとともに、社会に対して行為規範を示すものである。殊に、知的財産権分野においては、企業の経済活動に対して行動規範を示すという機能は、重要である。判決は、このような観点から、一般性普遍性のある法的判断を積極的に示すことが望まれている。他方、判決に接する者としては、判決の判断のうち先例的価値を有する部分(判例部分)と傍論部分とを区別し、判決の射程を正確に理解する必要がある。知財高裁大合議判決は、関係者の予測可能性という観点を踏まえて、積極的に判断基準を明示することなどを通じて、規範定立に努めている。他方、近時の最高裁判決には、予測可能性の観点や判決の射程の明示という観点からは、十分な説示がされているといえない例も見られる。知財高裁大合議判決及び最高裁判決を中心に、具体的な裁判例を題材として、規範定立機能が十分に果たされているかどうかを検証する。 |
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