「知財管理」誌
Vol.61 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 61巻(2011年) / 3号 / 317頁 |
論文区分 | 判例と実務シリーズ(No.391) |
論文名 | No.391 後出しされた実験結果を参酌した上で,進歩性を肯定した事例──日焼け止め剤組成物事件── |
著者 | 小 松 陽一郎,藤野睦子 |
抄録 | 拒絶査定不服審判の審決取消訴訟において、審決が、審判手続において提出された実験結 果を参酌すべきでないとした点、仮に同実験を参酌したとしても本願発明が予想外の顕著な効果を奏 するものとはいえないとした点につき、いずれも誤りがあるとして、本願発明の進歩性を否定した審 決を取り消した事例である。 出願人と第三者との公平の観点に立って、当初明細書に、当業者が「発明の効果」を認識できる程 度の記載がある場合やこれを推論できる記載がある場合には、記載の範囲を超えない限り、出願後に 補充した実験結果等を参酌することは許される、とした本判決の一般論は是認できる。 但し、本願当初明細書程度の定性的な効果のみの記載から、後日の実験データ提出により、判決が 認定した「予想外の顕著な効果」が根拠づけられることまでを予想することは容易とはいえず、進歩 性の判断をゆるやかにしたものではないかとも思われ、第三者にとっての他社権利監視の負担は増え る方向にある。 |
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