「知財管理」誌
Vol.57 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 57巻(2007年) / 9号 / 1505頁 |
論文区分 | 判例と実務シリーズ(No.343) |
論文名 | No.343 先行する用途が存在する場合の後願用途発明の特許性について―「シワ形成抑制剤」事件― |
著者 | 正林真之 |
抄録 | 医薬、食品関係等の化学関係では用途発明をどのように権利化して活用するかは重要なテーマである。特に、食品や医薬品関係では、人体に対して、異なる複数の作用/効果を同時に発現することがあり、しかもこれらは一体不可分であることがあるため、先行する用途発明が存在する場合には、後願用途発明の特許性について、種々の見解が生じる余地があった。これは例えば、いわゆる第二医薬用途の取り扱いの各国での相違というような現象として現れていたが、我が国の実務レベルでも、実際には、統一的な見解というのは実質的には確立されていないに等しい感がある。 これに関して、我が国特許庁の審査実務では、同一物質ないしは同一組成物に対して、後願用途発明と一体不可分の先行用途が存在する場合には、その後願用途発明の特許性については、大抵は否定的な結果となることが多い。その背景には、「後願権利者の特許の成立によって、先行用途発明の実施者のそれまでと何ら変わらない実施行為がある日突然制限されることになる」ということは許されるべきではない、というような価値観があるように思われる。 これに対して、美白作用とシワ形成抑制作用という一体不可分の二つの効能を同時に備え、かつそれらを同時に発現する同一の組成物(アスナロ抽出物を有効成分とする組成物)に対し、その後願用途発明(シワ形成抑制剤)に対して、従来からの否定的な見解とは異なる内容の判決が知財高裁でなされた。この判決は、これからの実務に対しても大きく影響すると考えられるので、まずはその概要とその背景について紹介することとし、あわせて、今後の実務への影響についての考察も試みたいと思う。 |
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