「知財管理」誌
Vol.57 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 57巻(2007年) / 3号 / 357頁 |
論文区分 | 論説 |
論文名 | 著作権侵害の責任主体に関するわが国判例法理の比較法上の位置づけ―テレビ視聴サービスの事例を中心に― |
著者 | 潮海久雄 |
抄録 | わが国裁判所は、カラオケ機器のリース、デジタル録画機器の提供などの教唆・幇助行為を行う者の責任主体性について見解が分かれていた。しかし、近年のテレビ視聴サービスに関する裁判例は、「私的複製」、「公衆送信」など著作権法の規定を解釈する中で、間接行為者の多様な行為類型に共通した基準として、間接行為者の侵害行為に対する管理・支配の程度を考慮する一方、非侵害用途の有無を考慮せずに、著作権侵害の責任主体性を判断している。この枠組みは、管理・支配の要件を物の提供の事例に適用せずかつ非侵害用途の有無を考慮する欧米の考え方と異質であり、また、デジタルの私的複製について著作権者の利益保護に欠ける面がある。しかし、わが国の裁判例は、抽象的執行・条件付執行や不法行為による差止請求を認めないなどの法的制約のもとで、間接行為者の寄与行為の程度など不法行為法の要素も考慮し、間接行為者に対する予測可能性に配慮している。 |