抄録 |
特許発明の経済評価(実施料の算定や損害賠償額の算定など)は、製品全体を基礎として算定する場合、特許発明が製品全体を対象としているのか、そのうちの一部分なのかを判断し、後者の場合、利用率(あるいは寄与率)を考慮することになる。このような算定をする場合、特許権のクレームが製品全体を特定したものであるとき、クレーム表現に形式的に従えば特許発明の経済評価が過大になりすぎる不都合が生じることがある。そこでクレーム表現を実質的に判断して、特許発明の特徴が製品全体に及ぶべきものか一部分に止まるべきものかを考慮しなければならず、また、発明の内容が技術的にみて特徴部分が公知技術に付加されたものか、あるいは公知技術と融合したものかという面も考慮しなければならないことがある。本稿はこの点を二つの事例に基づき、『クレームされた構成要件が技術的に可分のものであるなら、技術的特徴がクレーム中の部分にある場合、その部分を経済評価すべきであり、技術的特徴が全体にある場合なら当然に全体を経済評価するべきである。そしてクレームされた構成要件が技術的に不可分のものであるなら、特段の事情がないかぎり全体を経済評価すべきである。』との意見を提案するものである。 |