抄録 |
中国特許法の第二次改正とその後相次いで公表された裁判所の法解釈は、特許法の効力を一層強化し、他方権利行使を受けて事実状態を根拠とする抗弁権を主張する側の立場の弱さを一層際立たせるものとなった。その最たるものが仮処分制度の新設と先使用権の要件および効力についての解釈である。中国の仮処分制度は、申請後48時間以内に裁定を下すものであり、被申請人は主張、立証の機会を与えられることもなく突然に特許権を侵害するものと認定されて操業停止に追い込まれる虞れがある。これに対抗する有力な手段は「特許権不侵害確認請求の訴え」を予め提起し、勝訴判決を得ておくことであり、この裁判類型は極く最近中国最高人民法院により公認された。また、中国では先使用権の成立要件は厳格であり、かつ効力は限定的である。先使用権は、「実施を準備」していれば成立するのではなく、「準備を完了」しなければ成立しない。また、先使用権の範囲は、特許権者の特許出願時における先使用権者の生産量または生産能力の範囲に限定されると裁判所では解釈している。日本の先使用権とは大いに異なるので、先使用権に依拠して中国で実施行為を行うことには危険を伴うことを認識し、新規技術についてはできる限り特許出願により保護をめざすことが望ましい。 |