抄録 |
インテルが米国の競争法である反トラスト法に違反したとした連邦取引委員会(FTC)の審判開始決定書及びその後の同意命令が注目を集めている。本件は、とりわけ次の点で注目される。即ち、行為が採り上げられた点、競争法による技術開発活動の維持・促進が図られた点、独占の維持が「イノベーション・インセンティブの減少」を通じて行われるとされた点、「ネットワーク効果」が働く市場での規制であった点である。「ネットワーク効果」とは、利用者の数が増えるに従って、その利用から得られる便益が増すことをいい、かかる効果の結果、市場でシェアを獲得して業界標準となった規格・仕様が、圧倒的な独占力を獲得して、それを維持する可能性があると言われている。かかる効果が働く市場で支配的な地位を有する企業に対する規制は、国を問わず重要な課題となっている。本件は、同意命令で決着し、正式判断はなされずに決着したが、FTCの審判開始決定書は、これら問題を考える上でも、また、反トラスト法の先例・議論を理解する上でも、格好の素材を提供している。本稿では、審判開始決定書と同意命令を中心に内容をまとめ、米国の先例・学説に照らした検討を加えて、示唆を得る。 |