「知財管理」誌
Vol.50 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 50巻(2000年) / 6号 / 813頁 |
論文区分 | 判例と実務シリーズ |
論文名 | No.261 商品の普通名称 ―タヒボ事件― |
著者 | 岩坪哲 |
抄録 | 不正競争防止法(以下、本文において「不競法」とも略称する。)2条1項1号および商標権に基づく使用差止・損害賠償請求事件において、被告(控訴人)標章中の文字「タヒボ」が、商品(健康茶)の原材料を示す普通名称に該当するか否かが争われた事案である。原審および本判決は、ともに、不正競争防止法11条1項1号ないし商標法26条1項2号の「普通名称」とは特定の商品を指す一般名称として通用しているものであるとの基本的理解に立ちながら、原審は、本件商品の原材料樹木の普通名称性を否定して請求を認容し、一方、本判決はこれを肯定して請求を棄却した。近時は、健康ブームと相まって、それまで市場で知られていなかった物質を主成分とする健康食品が複数の業者によって取り扱われる例を見受けるが、先発者が選択した商標が当該物質の名称に由来する場合、当該名称についてどのような条件のもとで先発者の独占が許されるかは、不正競争防止法、商標法の制度趣旨に関わってくる問題である。単なる証拠の評価の違いを超えて、原審判と本件判決には、このような制度趣旨に対する考え方の違いが存在するように思われる。 |