抄録 |
商品形態の模倣行為は、平成5年の不正競争防止法の全面改訂において不正競争行為として新たに加えられたものである。本稿では、形態模倣行為に対して差止及び損害賠償を請求し得る者について初めて明示的に判断した東京地裁判決を紹介し、本事件を通じて企業実務の立場から民事的救済の請求主体の範囲と実務上の留意点について考えてみる。本事件は、米国のゴルフ用品メーカーが開発したキャディバッグ(X商品)の日本における独占的輸入販売業者X(原告)がY(被告)に対して、Yが販売したキャディバッグの形態はX商品の形態を模倣したものであり、不正競争防止法2条1項3号(形態模倣行為)に該当するとして、差止及び損害賠償を求めた事例である。東京地裁は、同号に基づき差止及び損害賠償を請求することができる者は、形態模倣の対象とされた商品を、自ら開発・商品化して市場に置いた者に限られるとして原告の請求を棄却した。本事件は控訴されたが、ほぼ同様な理由で控訴棄却されており、判旨は請求主体についての通説を確認した内容となっている。外国メーカーの製品を輸入販売するに際しては、商品デザインの模倣に対する排除措置として少なくとも取引契約において許諾者側の侵害排除義務などを課しておくことが必要となる。 |