「知財管理」誌
Vol.50 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 50巻(2000年) / 4号 / 489頁 |
論文区分 | 論説 |
論文名 | 侵害訴訟における特許無効の抗弁・再考 |
著者 | 中島和雄 |
抄録 | 近年、侵害訴訟において特許無効の抗弁を認めるべしとの説が相次いでいる。無効審判の長期化による侵害訴訟への弊害防止が主たる実践動機と思われるが、無効の抗弁を認めるべき必要は、そればかりではなく、侵害訴訟における結論の具体的妥当性を担保するためにも必要と考える。他方、今日の議論の状況からみて、侵害裁判所が先決事項として特許の有効性判断を行うこと自体については理論的障害は存しない。有力学説は、無効理由の存在が裁判所に明白な場合に限定するが、専門部が設置されていない地方裁判所の能力限界を考慮した現実論とみられ、審判請求期間に制約のない現行制度の下においては、理論上の問題としては瑕疵の明白性は要しないと解し、すべての無効理由につき無効の抗弁を認めるべきである。なお、その関連で、審決取消訴訟のあり方については、たとえば無効不成立の審決に対する出訴を認めないなどの法改正を要する点も出て来よう。 |