「知財管理」誌
Vol.49 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 49巻(1999年) / 6号 / 709頁 |
論文区分 | 特集(マルチメディアと法的保護―新領域を中心に―) |
論文名 | 電子マネー・電子決済と問題点 |
著者 | 大野幸夫 |
抄録 | 急激な技術進歩の中で、電子マネー実用化の現場では、理念型モデルの不振・挫折も生じている。国内外の利用者が、信用(信認)しない仕組み、不便なシステムは結局失敗する。現時点での技術、実証実験、定義や法的構成等のみでなく、セキュリティも含めある程度未来予測も踏まえた議論をしないとミスリーディングとなる。一般利用者側は、電子マネーに現金に換わる利便性・安全性の高い機能提供を望んでおり、この原点から出発して、契約自由の原則から技術面の競争も阻害しないように法的課題を検討していけばよい。電子マネーは、デジタルネットワークから生まれる私的なお金である以上、過去の金融・経済(決済概念)法律論と無関係ではないが、行政上の通貨(紙幣・硬貨)を前提とする議論では捉えられない問題も多い。デビットカードなどの急速な利用拡大をみても、法的検討(総論各論)に際し、無理に既存の尺度にはめ込む思考スタイルは止めなければならない。この意味で、技術面も含めて電子マネーを巡る取引実体を多面的に分析・評価し、法的側面から総合的に見直す考え方(「システム法的分析評価」)も必要となろう。 |