抄録 |
筆者は、1991年5月から1997年3月末まで欧州の連合王国、ロンドンに生活をした。現地では、ITMA(連合王国商標代理人協会)及びECTA(欧州共同体商標協会)のメンバーとなり商標に関わるさまざまな活動に参加すると同時に、ロンドンに本拠を置く商標代理人事務所Grant、Spencer、Caisley&Porteousにおいて連合王国及びEU(欧州連合)における商標制度の調査研究並びに実務習得に携わる機会を得た。同事務には、当時ITMAを代表してヨーロッパ・ハーモナイゼーション及び英国法改正のロビー活動に携わっておられたSpencer氏がおられ、筆者は同氏の招きによりEU指令(89/104/EEC)履行中の各国商標法の比較研究の手伝いをすることを目的に事務所に入ったのである。そしてそこで驚きと共に知ったことは、ヨーロッパ各国商標法が形の上では統一されつつある中、その各条文の解釈適用には各国の文化、歴史、ことばが反映し、その真の調和が実は非常に困難であるということであった。本稿はそのようなことを背景に、近時の欧州商標の判例を見つつ、EUが真のヨーロッパ・ハーモナイゼーションに向かうその姿を検証する。 |