「知財管理」誌

Vol.48 記事詳細

掲載巻(発行年) / 号 / 頁 48巻(1998年) / 7号 / 1147頁
論文区分 随想・紀行
論文名 特別と一般の相克
著者 松井孝一
抄録 特許法は、独創性のある技術を発明した人に対して当該技術を専用的に使用する特権を与える。特許制度は発明者に対して経済的な利益を保障する私益保護の制度であると同時に、技術の進歩を促し、一定期間経過後はそれを公有のものとすることによって誰もが技術革新の恩典に浴することができるようにするという優れて公益的な制度でもある。特許制度は人類の英知の所産とも言うべきものであり過去何世紀かの試練を経て現在に受け継がれてきた。しかし特許制度が、法の産物である以上どのような権利に対してどのような保護を与えるかは立法者の判断に委ねられている。そしてその内容をどうするかは国の施策、社会・経済的な背景などによって大きく影響を受ける。米国においてもかっては独占禁止的な考え方からアンチパテント的な政策がとられた時代もあったが、20年近く前より知的財産の尊重が叫ばれそのための法制度の改革が行われてきた。日本に於いても近年特許庁によって特許権強化の方針が打ち出され、平成9年11月には工業所有権審議会損害賠償等小委員会から具体的な強化策に関する報告書が出され、12月には答申が具申された。さらに10年2月には特許法の改正案が閣議決定された。上記報告書及び今回の改正案について、少々個人的な感想を述べてみたい。
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