「知財管理」誌

Vol.48 記事詳細

掲載巻(発行年) / 号 / 頁 48巻(1998年) / 4号 / 497頁
論文区分 論説
論文名 並行輸入とライセンス
著者 ライセンス委員会第1小委員会
抄録 昨年7月1日、並行輸入の是非を巡り議論を呼んだ「BBSアルミホイール並行輸入事件」の最高裁判決が下った。本ケースは、ドイツ・日本の特許権者が同一人であり、並行輸入された製品はまさに真正商品であるという比較的簡単な事例であった。当委員会では、この最高裁判決を踏まえて、今後並行輸入とライセンスの問題を考える場合どのような点を考慮すべきかを探ってみた。その為に、BBS事件判決、その理論的問題点である消尽論と黙示の実施許諾の考え方、並行輸入と差止につき検討し、更に米国における並行輸入に関する考え方およびヨーロッパの並行輸入に対する考え方につき概観し、併せて商標・著作権の状況につき触れた。最後にこれらを考慮に入れ、ライセンス契約において並行輸入を阻止するために契約上どのような点を考慮すべきかを検討した。前述したように、BBS事件は、並行輸入の一事例に過ぎない。しかしながら、最高裁判決では、今後の他の並行輸入のケースにも、当てはめうる考え方を示唆している。よって、並行輸入とライセンス契約を考える上で、BBS最高裁判決をまず考慮しなければならないが、並行輸入のケースにも種々のパターンがあり、その総てを今回の最高裁判決から推し量るのも難しい点がある。今後の並行輸入とライセンスを考えるに際し参考になるのは、アメリカ、ヨーロッパの並行輸入に対する考え方、特に個々の判例を検討していくことが必要と考える。
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