抄録 |
我が国は、特にここ1、2年プロパテント政策導入の方向付けが顕著になされているといえるが、、そのような状況にあって、我が国の特許権侵害訴訟の現状にはどのような問題があり、その解決のために何が必要かを検討する。我が国の特許権侵害訴訟の問題点として、審理遅延の問題と、損害賠償低額化の問題があるといわれている。その要因は、本文指摘のとおりであり、我が国の不法行為法と英米法の不法行為法との基本的枠組みの違いの上に立って、特許権侵害訴訟における審理期間の迅速化と損害賠償額の適正化を、訴訟運営及び法律改正の両面から実施しなければならない。また、特許権侵害訴訟において最も主要な争点となる特許発明の技術的範囲についての基本原理は、本文指摘のとおりであり、従来我が国の裁判所は均等論の採用に消極的であるとされていたが、最高裁は、第三小法廷平成10.2.24判決判時1630号32頁において最高裁としては、初めての均等論についての実質的判断を示した。最高裁が均等論を具体的要件を示して是認したことは画期的判断であり、これも最近の裁判所における知的財産権重視傾向の一つの現れともいえる。この最高裁判決を踏まえた地裁・高裁段階の判決が積み重ねられることにより、均等論の要件はより具体化されるものと思われる。 |