抄録 |
工業所有権の保護に関するパリ条約には、「同盟国国民を不正競争から有効に保護する」旨の規定がある。我が国の不正競争防止法は、昭和9年営業者の誠実なる保護及びパリ条約のヘーグ改正条約加盟のために制定された。不公正な競争行為は、発明、考案、意匠、商標、著作物を保護する知的財産権法によっても規制できるが、未登録の周知商標の不正使用、未登録意匠の模倣行為、品質誤認を惹起する表示及び営業秘密の不正取得、使用、開示のような不正競争行為は知的財産権法ではカバーされないところであり、不正競争防止法はこのような広い範囲の不正競争行為を取り扱い、ある意味では知的財産権法を補完し、知的財産権法によっては与えられない種類の保護を認めるものである。ところで、最近の模倣商品流通状況に関する企業アンケート調査報告等によれば、我が国はアジアでも有数の模倣商品の流通国であると報告されている。また、知的財産訴訟の法令別判例統計をみると、特許権侵害に関する訴訟と同等若しくはそれ以上に不正競争防止法に関する訴訟件数が多い。このような訴訟が多発している現状に鑑みると企業においてはいわゆる狭義の知的財産権のみを意識した管理ばかりでなく不正競争防止法による保護についても配慮した知的財産管理を行う必要がある。本稿では、不正競争防止法に依拠した知的財産訴訟の現状や模倣商品の流通状況及び国内外の不正競争防止法について概観しながら、21世紀における不正競争行為についての企業内管理の在り方を展望する。 |