抄録 |
医療関連企業においては、一つの新薬に対する開発費用が100〜200億円、開発期間が10年を超越えることもあり、新薬の探索に莫大な研究開発投資を行っている。したがって、化学系、特に医薬関連企業において物質発明は重要である。新規物質を探索する際、あるいは出願する際に周到な従来技術調査が行われる。しかし、そのような物質発明関連の出願実務においてほぼ必ずといっていいほど直面するのは、構造類似化合物を開示した引例を引用した拒絶理由通知である。このような拒絶に対してどのように対応していくかは、特許実務家にとって頭痛の種であり、また腕の見せ所である。過去、日本では米国の物質発明の非自明性に関する論文はあまり発表されていないようである。本論文は、国際委員会第2小委員会の物質特許担当者を中心として米国の判例を検討した結果を、読者にデータベース的な意味あいで情報提供するものである。検討した判例は、米国で発表された文献に記載されたもの、その判例に引用されたもの、さらにBNA発行のCD-ROM(Intellectual Property Libraray)に収録された判例から検索し、その総数は約100件に達した。本論文には古い判例も多く掲載しているが、現在の拒絶理由通知、審判決例においても1960年、1970年代の判例がいまだに引用されており、本論文で取り上げた判例を知識として知っていることの意義は大きいと考える。 |