抄録 |
不正競争防止法に「商品形態の模倣禁止」の規定が平成5年に成立し平成6年5月1日から施行され既に3年が経過した。この規定は従来、「他人の商品たることを示す表示」という不正競争防止法上の規定で商品形態が保護されていたにもかかわらず、商品形態の模倣をそれとは別個に禁止し模倣されたオリジナルの商品形態を保護しようとするものである。したがって、両者は保護法益が異なっている。そして、本新設規定は一定の期間に限って市場に早期参入した者の投下資本の回収ができるようにしようとするものである。市場に後から参加して、なんの投資努力もしないで他人の商品を模倣する者は商品化の費用や危険を軽減でき回避できると共に、市場において先行者との間で競争上有利な地位を労せずして獲得できる。これでは公正な競争上著しく不公平となる。しかし、健全かつ自由な競争は模倣行為についても一定の秩序に従って認められなければならない。したがって、模倣行為一般を全面的に禁止することは望ましくない。そこでどこまで模倣が許されるかのバランスが求められ、この妥協点として本新設規定にその要件が原則と例外の形で規定された。本新設規定は厳格に解釈すれば模倣は「デッドコピー」のみとなり物理的に同一範囲しか保護されないと解される見解ともなり、一方拡張的に解釈すれば、模倣は実質的な類似範囲までも認められるとの見解ともなり得ることになり、どこに両者の調和を求めるかが問題となる。この問題はもちろん裁判の実務の中で解決される事項である。最近、本新設規定について示した希つかの判決が下されたので、その中の一つを取り上げると共にその他の判決も織り込みながらこれらの傾向を紹介し実務の指標を示そうとするものである。 |