専門委員会成果物
EU/商標制度の改正草案発表
2015年6月8日に、EU理事会により商標制度の改正草案の最終版が交付された。本草案は今後EU議会で検討後に施行される。主な改正の内容は以下の通り。- OHIMの名称を“European Union Intellectual Property Office”(欧州連合知的財産庁)に変更。
- CTMの名称を“European Union Trademark”(欧州連合商標)に変更。
- 商標の定義における視覚的要件の廃止(非伝統的商標の法的安定性のため)。
- 出願・更新時の手数料を、現在の3区分まで同一から、1区分から区分数に応じたものに改定。
- 各種手続の合理化(各国特許庁での出願の受付を廃止して欧州連合知的財産庁に統一、等)。
- 模倣品対策の強化(他の加盟国を通過して市場とする加盟国に模倣品を輸送する行為を一定条件下で規制、等)。
- 2012年6月20日以前にクラスヘディング指定で登録されたCTMの指定商品の明確化(詳細は「EU/クラスヘディングで登録されたCTMに関する新規則」の項参照)。
なお、改正案については以下のサイトで確認できる。
【規則】
http://www.consilium.europa.eu/register/en/content/out/?&typ=ENTRY&i=LD&DOC_ID=ST-9547-2015-ADD-1
【指令】
http://www.consilium.europa.eu/register/en/content/out/?&typ=ENTRY&i=LD&DOC_ID=ST-9547-2015-ADD-2
(現地代理人情報)
EU/クラスヘディングで登録されたCTMに関する新規則
OHIMの2012年6月20日付の通知No2/12(欧州連合司法裁判所(ECJ)「IP Translator」事件の2012年6月19日付判決に基づく)により、2012年6月21日以降に クラスヘディングを指定して出願するCTMについては、該当するクラスに属する全ての商品・役務を保護する場合はその旨、一部についてのみ保護する場合はその指定商品・ 役務を明確化することが必要となっていたが、本年6月に公布された商標制度の改正草案の新規則では、2012年6月20日以前に出願されたCTMについても、同様の明確化が必要と されている。2012年6月20日以前にクラスヘディングを指定して出願されたCTMの権利者は、新規則施行日から6ヶ月の間に、保護する具体的な指定商品・役務を、出願時に有効な 国際分類表の記載に基づいて特定した宣誓書を提出できるようになる。宣誓書が提出されなかったCTMについては、従来のクラス全体の指定商品・役務ではなく、文字通りの 指定商品・役務のみを保護するものとして処理されるため、実際に使用している商品・役務がクラスヘディングに記載されていなかった場合、その権利を保護できない可能性が 生じる。
(現地代理人情報)
カナダ/商標出願におけるニース分類の採用
2015年6月29日にカナダ知的所有権庁(CIPO)は、今秋より、ニース分類に基づく区分制度を採用すると発表した。具体的なニース分類に従った商標出願の 受付開始日時は未定であるが、区分制度の導入により、出願人及び審査官双方にとって商標調査のプロセスが簡素化され、先行類似商標との関係における類否判断に資する というメリットが期待される。それに伴い、CIPOのホームページに掲載されている商品役務マニュアル(http://www.ic.gc.ca/app/opic-cipo/wrs/dsplyPblcSrch.do)も改訂される予定で、指定商品役務 データベースにニース分類に基づく指定商品役務が追加され、区分検索も可能となり、適切な区分を選択しやすくなる。但し、指定商品役務の記載方法としては、従来通り 具体的な記載が求められるという点では、実務上の大きな変化はない見込みである。
(現地代理人情報)
フランス/黙示的拒絶に関する法令の告示
2015年5月9日に法令第2015-511号が告示された。この法令により、フランス知的財産庁は商標の新規出願及び更新出願の審査を出願日から6ヵ月以内に 終了しなければならず、この期間に何も審査結果が通知されなかった場合、当該出願は黙示的に拒絶されたものとみなされる。この法令は、全ての商標出願及び商標更新出願に 適用され、告示日以前からペンディングのものは、告示日から起算して6ヵ月後に黙示的拒絶となる。この黙示的拒絶に不服の場合は、黙示的拒絶となった日より1ヵ月以内に 管轄権を有する控訴裁判所に提訴しなければならない。従って、今後は出願後の6ヵ月目のモニタリングが重要となる。
(NGB、他)