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専門委員会成果物
知的財産と環境に関する三極特許庁シンポジウムが開催される
三極特許庁は持続可能な特許制度のために協働している。環境問題に関する初の三極特許庁のイベントであった今回のシンポジウムでは,欧州・日本・米国の発明者,環境技術の業界代表者,及び三極特許庁と世界知的所有権機関(以下,WIPOと記載)の高官が講演を行った。これらの講演では,環境技術分野における発明者の課題と機会が示されたり,重要な環境問題への取り組みが紹介されたり,カーボンニュートラルに対する貢献が紹介されたりした。
環境問題に対する国際協力の強化
まず,シンポジウムの開会にあたり,EPOの特許付与手続部門の副代表であるSteve RowanがJPOの森清長官とUSPTOのDrew Hirshfeld所長とともに登壇した。各極特許庁は,カーボンニュートラルへの移行に対処するうえで,知的財産と特許制度が重要な役割を果たすことを強調した。続いて,WIPOのDaren
Tang長官が基調講演を行い,WIPO Green等の重要性を強調した。
またイベントでは,ユーグレナの創業者である出雲充氏,Nokeroの創業者でありCEOであるStephen Katsaros,欧州に拠点があるクリーン技術の中小企業であるOrcan
Energy社(以下,OE社と記載)による講演が行われた。OE社は,廃熱を電気に変換する技術である“Organic Rankine Cycle”に基づき効率的なエネルギーソリューションを開発・製造・販売しているミュンヘン工科大学からスピンオフした企業である。OE社の講演では,OE社が保有する26ファミリの170以上の許可された特許を含む特許ポートフォリオが,資金集め,協力者への交渉の成功,及び国際的な事業の拡大に際し,重要な役割を果たしたと説明があった。
最後のセッションでは,三極特許庁とそれらの環境技術の業界の代表者によるパネルディスカッションが行われた。司会は,WIPOのEdward Kwakwa事務局長補佐が務めた。パネルディスカッションでは,炭素軽減技術に発明の余地があるか,知的財産がどうやってこれらの発明を用いて市場参入を促進すべきか,環境技術への投資を保護する特許の役割をどうすべきか,について議論が行われた。
知的財産と持続可能性の関係については,6月に行われる次回の五極特許庁の会合で再び重要な話題として扱われることになるだろう。
注 記
- Trilateral Symposium on IP and the environment(2022年3月18日)
https://www.epo.org/news-events/news/2022/20220318a.html
(林 潤平)
