専門委員会成果物

IPRとの禁反言により査定系再審査を破棄したUSPTOの決定について行政手続法に基づく審理が可能と判断した事例

CAFC判決 2022年2月24日
Alarm.com Incorporated v. Hirshfeld

[経緯]

 Alarm.com Incorporated(A社)は,Vivint, Inc.(V社)の保有する3件の特許に対してIPRを請願した。PTABは,いずれの特許も一部クレームは有効と判断した。その後A社は,IPRで有効とされたクレームに対し,IPRとは異なる理由で査定系再審査を請求したが,USPTO長官は「特許性に関する実質的な新しい疑問」について言及することなく,先行するIPRとの禁反言に基づき査定系再審査を破棄した。A社は,USPTOを相手取り,行政手続法に基づき査定系再審査の破棄決定の審理を地裁に求めた。地裁は,禁反言による破棄決定の審理は,査定系再審査に関連する法制度全体から考えると請求することができないとして,A社の訴えを却下した。A社はCAFCに控訴した。  

[CAFCの判断]

 CAFCは,地裁の判決を棄却し,CAFCの意見に準じた更なる手続きを行うよう差し戻した。
CAFCは,法律が司法による審理を排除するか否かを判断する際には,審理が可能との「強力な推定」を適用する。審理が可能との推定は,「明確で説得力のある示唆」によってのみ覆されるという基準を示した。CAFCは,この基準において,禁反言により破棄された査定系再審査の審理が法律により排除されるか否かを検討した。
 CAFCは,司法による審理を明示的に排除する査定系再審査に関連する法律は,特許法303条(c)のみであると指摘した。特許法303条(c)には特許性に関する実質的な新しい疑問が提起されていないという決定が最終的であり,不服申し立てできないことが定められている。その上で,特許法303条(c)の適用範囲が限定的であると判断された最高裁判例を複数引用し,禁反言による決定は特許法303条(c)の範囲外であり,審理の請求は可能とした。
 一方,USPTOは,特許法306条とそれに関連する規定が「再審査における特許性に不利な決定の審理をする権利を特許権者のみに積極的に付与している」という理由で,再審査請求人によるいかなる種類の審理の可能性も黙示的に排除されるとする等と主張した。しかし,CAFCはこれらの主張は,いずれも審理が可能との「強力な推定」を覆すのに十分ではないとした。
 これらのことから,CAFCは,禁反言による決定に対する審理はA社にとって請求可能であると結論付けた。

(谷元 史明)

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