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専門委員会成果物
世界知的財産指標レポート2021:2020年の世界全体の商標出願はパンデミックにもかかわらず急増。特許出願,意匠出願も増加(1)
WIPIレポートでは約150の国および地域からのデータにより,イノベーターやデザイナー,ブランドが,事業の拡大や新たな成長を求める中で,知的財産を利用しようとする動きが高まっている状況が示された。
WIPOのDaren Tang(ダレン・タン)事務局長は「過去数十年間で最も深刻な経済収縮が起きたにもかかわらず,イノベーションの指標である知的財産権の出願が顕著に回復したことが確かめられた。」と述べている。そしてこれは2008〜2009年の金融危機の際に特許出願および商標出願の活動がいずれも大きく縮小したこととは対照的であると述べている。
Tang事務局長はさらに,2020年に商標出願が特に大きく増加したことについて「非常に大きな経済的打撃があったにもかかわらず,企業がいかに新たな製品やサービスを市場に導入したかを,2020年における商標出願活動の2桁の伸びが示している。困難な状況にもかかわらず,知的財産を使って企業は新たな方法で顧客にアピールし,新たな市場を開拓し,そしてアイデアを世界に届ける機会を見出している。」と述べている。
WIPI年次レポートは,IPデータを収集および分析し,政策立案者,ビジネスリーダー,投資家,学者およびその他,イノベーションと創造性のマクロトレンドを求める人々に情報を提供する。
「WIPIは,状況を把握して世界のどこでイノベーションが起きているかを確かめるための重要なツールです。」と,WIPOの統計関連の業務を監督するMarco Aleman事務局長補は述べ,「我々はデータによって意思決定を行う世の中にいる。よってこの報告書は政策立案者やその他の人々が将来の計画を立てる上で役立つ。」と付け加えた。
特許分野のハイライトより
COVID-19パンデミックにより世界経済に引き起こされた大混乱にもかかわらず,2020年,実に330万件の特許出願がなされ,これは2019年に対して1.6%の増加である。中国による出願が大幅に増加し,2019年よりも96,498件(6.9%)増加した。大韓民国7,784件,香港5,024件,インド3,144件の増加も加わり,成長の主要な推進力となった。ただし,それでも2020年の世界合計は,2018年の特許出願のピークよりは約5万件少なかった。
世界中で提出された330万件の特許出願は230万件の居住者による出願(全体の70.3%)および100万件の非居住者の出願(29.7%)から構成される。居住者による出願は2020年には2019年と比較して3.3%増加した。対照的に,非居住者の出願は2.2%減少し,これは2016年以来,初めての減少である。特許出願数は長期的には増加傾向にあり,世界中で提出された特許出願は1995年の約100万件から,2010年には約200万件,2016年に300万件に達した。
中国国家知識産権局(CNIPA)は2020年の特許出願を約150万件(1,497,159件),世界全体の45.7%を受理した。これは米国特許商標庁(USPTO)が受理した597,172件(前年比3.9%減)の約2.5倍である。日本特許庁(JPO)がそれに続き288,472件(前年比6.3%減),韓国特許庁(KIPO)226,759件および欧州特許庁(EPO)180,346件だった。これらトップ5庁の合計は世界全体の85.1%を占めており,2010年の合計シェアより7.7%高くなった。これは主に中国の大きな成長によるもので,中国は2010年の19.6%から2倍以上に成長し,2020年には45.7%に拡大した。
注 記
- WIPOプレスリリース(2021年11月8日)
World Intellectual Property Indicators Report:Worldwide Trademark Filing Soars in 2020 Despite Global Pandemic
https://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2021/article_0011.html - World Intellectual Property Indicators 2021
https://www.wipo.int/edocs/pubdocs/en/wipo_pub_941_2021.pdf
(参照日:2021年12月1日)
(福士 景子)
