専門委員会成果物

ドイツ連邦政府,UPC協定の暫定適用に関する議定書の批准書を寄託

 ドイツ連邦政府は,2021年9月27日に,UPC協定の暫定適用に関する議定書(PAPプロトコル)の批准書を欧州連合理事会事務局に寄託したことを公表した1)。ドイツ連邦議会(Bundestag)において,欧州単一特許・統一特許裁判所(UPC:Unified Patent Court)協定関連法案が2017年3月9日に採択されていたが,ドイツ連邦憲法裁判所(FCC:German Federal Constitutional Court)での審理によって数年間保留されたのち,統一特許裁判所の設立に向けた決定的なステップが踏まれたことになる。2021年7月に発表されたドイツ連邦憲法裁判所の決定2)に続き,8月にはUPC協定およびPAPプロトコルの批准に関するドイツの法律に大統領が署名した。これにより,ドイツは批准を進めることができるようになった。
 ドイツ連邦法務大臣のChristine Lambrechtは,記者会見で,統一特許裁判所が具体化し,欧州の革新的産業のための欧州特許改革に向けた重要な役割を果たすことを歓迎すると述べた。
 参加しているEU加盟国は,9月29日に行われる競争力委員会(Competitiveness Council)において協議を行う3)。統一特許裁判所の設立の最終段階に入るには,PAPプロトコルの批准国が,ドイツの他にさらに2つ必要である。しかし,必要な批准はまもなく達成されることが見込まれており,それにより国際機関としてのUPCの設立が実現されると期待されている。
 この暫定適用の段階では,例えば,二次立法および裁判所の予算確保,電子事件管理システムの完成(ストレステストを含む),裁判所裁判官の選定および任命などのプロセスが行われる。
 UPC協定の発効により,統一裁判所の運用が可能であることが明らかとなれば,加盟国にとって適切なプロセスを経由したことを確認する「門番」として,ドイツによる協定の最終批准がなされることになる。

〈筆者付記〉
 ドイツに続き,スロベニアも2021年10月18日にPAPプロトコルを批准した4)

注 記

1) Germany ratifies the Protocol on Provisional Application
  https://www.unified-patent-court.org/news/germany-ratifies-protocol-provisional-application

2) German Federal Constitutional Court declares complaints against UPCA’s ratification Bill inadmissible
  https://www.unified-patent-court.org/news/german-federal-constitutional-court-declares-complaints-against-upcas-ratification-bill

3) Competitiveness Council(Internal market and industry), 29 September 2021
  https://www.consilium.europa.eu/en/meetings/compet/2021/09/29/

4) Slovenia ratifies the Protocol on Provisional Application and the UPC Agreement
  https://www.unified-patent-court.org/news/slovenia-ratifies-protocol-provisional-application-and-upc-agreement

(参照日:2021年10月25日)    

(上野 透)

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