専門委員会成果物

WIPOは，2022年，2023年の２年間の活動・予算計画を検討

　WIPO事務局長であるDaren Tang氏は，今後５年間のWIPOのビジョンを加盟国に説明するとともに，短期財政の状態は良好であることを提示し，新型コロナウイルスのパンデミックからの回復に向けた新たな取り組みについて発表した^１）。
　WIPOの計画予算委員会（Program and Budget Committee：以下，PBC）において，Tang氏は，2020年10月１日に事務局長に就任以降，はじめて２年間の予算案を発表し，2022年から2026年の中期戦略計画（Medium-Term Strategic Plan：以下，MTSP）の詳細について説明した。
　Tang氏は，「このビジョンにおいて，知的財産は全ての国での雇用創出，投資誘致，企業の成長支援，経済と社会の発展のための強力なツールである。WIPOの活動は，すべての加盟国を支援しなければならず，特に開発途上国や後発開発途上国に知的財産の恩恵をもたらさなければならない。」と述べた。

【予算案】
　2022年，2023年の２年間の予算計画は，支出が３％増（合計790.8百万スイスフラン），収入が８％増（951.8百万スイスフラン）であり，支出の増加は，WIPOの継続的なデジタル・トランスフォーメーションの取り組みと，WIPOの幅広いインフラとサービスの適切な資源確保によるものである。また，開発費は4.5％増加し，全体の18.5％を占めている。

【MTSP】
　MTSPでは，WIPOは知的財産の国際的な規範と基準を設定する機関として，グローバルな知的財産サービスの提供という強みの分野に引き続き注力することを言明している。
　MTSPは，知的財産の技術的・法的な側面を越えて，知的財産が世界中の人々の生活の一部であることを周知するためのものである。
　Tang氏は「私たちは，専門家だけでなく，あらゆる人々を対象として，知的財産が彼らにどのように関連しているかを示し，彼らのイノベーションやアイデアを世界に発信するためのツールとして利用できるようにしなければならない。私たちは実用的な知的財産スキルを構築し，イノベーター，クリエイター，企業，研究者，コミュニティを支援する活動を強化していく。」と述べた。
　また，IPエコシステムの恩恵を受けてこなかった青少年，女性，零細，中小企業などへ焦点を当てること，持続可能な開発を強化し，地球規模の問題に対処するために，国連加盟国及びその他の国際機関にわたる外部の利害関係者及びパートナーとの協力を倍増させることに言及している。

【新型コロナウイルス関連サービス】
　パンデミックを克服し再建を目指す加盟国を支援するためのサービスと措置について発表した。
　ここでは，WIPO内で十分な経験と専門知識を有する５つの分野，すなわち①政策と立法支援，②技術支援と能力構築，③イノベーション支援と技術移転，④知的財産紛争解決，⑤知識資源を対象としている。
　同時に，WIPOは，世界保健機関（WHO）及び世界貿易機関（WTO）との三者間協力を継続し，本年10月までに予定されている技術移転及びライセンスに関する最初の三者間ワークショップにより，技術支援及び能力構築に関する取組を強化する。
　Tang氏は，「過去16カ月間の新型コロナウイルスの問題にもかかわらず，WIPOの強固な基盤は損なわれないままである。これからの２年間を通して，知的財産が，グローバルな課題の対処に役立ち，世界中の人々の生活にプラスの影響を与え，全ての加盟国における成長と発展を支援することに重点を置きながら，バランスのとれた慎重な財政アプローチを維持することを提案する。」と述べた。

注　記

WIPOプレスリリース（2021年７月12日）
https://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2021/article_0007.html

（参照日：2021年９月７日）　　

（和田　学）

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