- トップ
- 協会活動
- 専門委員会成果物
- 外国特許ニュース(2021)
- 4月号 欧州(1)
専門委員会成果物
「AI主導の世界における特許の役割」に関するEPOのオンラインイベントが開催される
欧州特許庁のAntónio Campinos長官は,モデレーターである欧州特許庁の運営ディレクターのAliki Nichogianopoulou氏と,特許の世界におけるAIの役割,課題と機会,知的財産戦略におけるAIの影響について議論した。議論の中で,António Campinos長官は「欧州特許庁はEPC締約国及びIP 5とともにAI特許について議論をしている」ことを強調した。
今回のイベントでは,政策立案者,投資家,発明家,中小企業,学者,知的財産専門家が,AIと知的財産権に関する一連のプレゼンテーションを視聴した。複数の講演者から,分類と検索における特許付与プロセスの効率を高めるためのツールとしてのAIの利用について紹介があった。「特許からビジネスの成功まで」のプレゼンテーションでは,新興企業および中小企業を対象とし,知的財産権が小さなビジネスにもたらす良い影響について紹介された。また,AI研究を推進し,経済成長の促進を目指す学術的イニシアチブである「European Lab for Learning and Intelligent Systems (ELLIS)3)」も紹介された。欧州特許庁は,2021年にELLISとの締結を予定しているMoU(Memorandum of Understanding)を準備している。
会議では,AIの機会とリスクの両方についての意識を高めることの重要性についても議論が行われ,欧州特許アカデミーのXavier Seuba学長は,AIに関する適切な研修教材の開発方法について,Berndt Hugenholtz教授およびJean-Marc Deltorn教授と議論した。彼らは,AIと知的財産に関する教育プログラムから得られた専門的な知識と洞察について共有した。
欧州特許庁のチーフエコノミストYann Ménière氏は,「特許と第4次産業革命−データ駆動型経済を可能にする世界の技術動向4)」に関する知見を発表した。最近発表されたこの調査によると,2018年だけでも40,000件近くの新たな国際特許ファミリー(IPFs)が出願されており,同年の世界の全特許活動の10%以上を占めていることが報告された。Ménière氏はプレゼンテーションの中で,第4次産業革命に関する技術についてのグローバルなイノベーションは過去10年間で大きく加速し,2000年から2009年までの年平均の特許権の増加率が12.8%であったのに対し,2010年から2018年までの年平均の特許権の増加率は20%近くであったと指摘した。
このイベントは,最後に,欧州委員会と欧州議会における最近の主要なAIイニシアチブ,そしてこれらのイニシアチブへの人間中心のアプローチに続いて,欧州のAI戦略に関するパネルディスカッションで締めくくられた。パネリストは,データの所有権という最も差し迫った問題への対応と,欧州経済におけるイノベーションを促進することを目的とした政策変更に対応しながら,欧州におけるイノベーションの発展を支援する方法について意見を共有した。
注 記
- EPO-Impact of AI on patent system explored at EPO digital event
https://www.epo.org/news-events/news/2020/20201218.html - EPO-Shaping tomorrow:3D printing and its impact on IP
https://www.epo.org/news-events/events/conferences/2020/3d-printing.html - European Lab for Learning & Intelligent Systems
https://ellis.eu/ - Patents and the Fourth Industrial Revolution - the global technology trends enabling the data-driven economy
https://mcipo.gouv.mc/en/EPO_study_4IR
(参照日:2020年1月22日)
(余吾 貴彦)