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専門委員会成果物
幅広い投与量の記載がある明細書によるクレームの記載要件充足が否定された事例
CAFC判決 2021年11月30日Biogen International GmbH v. Mylan Pharmaceuticals Inc.
[経緯]
Biogen International GmbH(B社)は,Mylan Pharmaceuticals Inc.(M社)に対して,保有する多発性硬化症に対する治療方法の特許8,399,514(’514特許)を用いて特許権侵害訴訟を提起した。
地裁では,「治療上有効な量としてのフマル酸ジメチル(DMF)は約480mg/day」というクレームの限定要素に対して,明細書にDMF投与量について幅広い範囲の記載がある場合に,出願時点で上記限定要素が明細書でサポートされているかが争いとなった。
地裁は,’514特許のクレームが明細書でサポートされていないため特許法112条の記載要件を満たさず無効であるとするM社の主張を認め’514特許を無効と判断した。B社は地裁の判断を不服としてCAFCに上訴した。
地裁では,「治療上有効な量としてのフマル酸ジメチル(DMF)は約480mg/day」というクレームの限定要素に対して,明細書にDMF投与量について幅広い範囲の記載がある場合に,出願時点で上記限定要素が明細書でサポートされているかが争いとなった。
地裁は,’514特許のクレームが明細書でサポートされていないため特許法112条の記載要件を満たさず無効であるとするM社の主張を認め’514特許を無効と判断した。B社は地裁の判断を不服としてCAFCに上訴した。
[CAFCの判断]
CAFCは次の2つの理由により地裁の判断を支持した。まず,’514特許の明細書には,DMF投与量として100〜1,000,200〜800,240〜720,480〜720mg/dayのように幅広い範囲の記載があるのみで,480mg/dayは当該範囲の端点としてしか記載されていなかった。したがって,当業者が範囲の端点を好ましい投与量として認識することはできないと判断した。次に,明細書には「治療上有効」という文言の意味として,予防や症状の進行を抑えることも含むように記載されていた。これは創薬の観点と言うよりも,もっと広い意味で「治療上有効」として認識していたことになる。つまり,多発性硬化症の治療上有効な量としてDMFを480mg/day使用することは出願時に発明者が所有していなかったと判断した。(今井 大輔)
