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専門委員会成果物
機能的言語で定義された属クレームについて,当業者がその機能を達成する場合と達成しない場合を区別できるように開示していない場合に記述要件を満たさないと判示された事例
CAFC判決 2021年8月26日Juno Therapeutics, Inc. v. Kite Pharma, Inc.
[経緯]
Juno Therapeutics, Inc.(J社)は,T細胞療法用のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸ポリマーに関する特許7,446,190(’190特許)を保有している。CARは,(a)ゼータ鎖部分,(b)共刺激領域,(c)選択された標的と特異的に相互作用する結合要素,の3つの部分からなる。
J社は,Kite Pharma, Inc.(K社)の製品が’190特許を侵害したとしてK社を提訴した。K社は,’190特許の無効の確認判決を求める訴訟を提起した。地裁は,K社が記述要件の欠如によるクレームの無効を証明できなかったと認定し,K社の申し立てを却下した。
K社は,この判決を不服としてCAFCに控訴した。
’190特許のクレーム3及び9は,上記CARを構成する3つの部分のうち,結合要素を単鎖抗体(scFv)に限定しているが,標的は限定されておらず,任意の標的に結合するための任意のscFvを広くカバーしている。しかし,明細書には2つの異なる標的に結合する2つのscFvの例のみしか開示されておらず,またそれらが広大な属全体をどのように代表しているかを判断するための詳細は開示されていない。
また,共通の構造的特徴に関しては,scFvは一般的に共通の構造を持っているものの,一般的な共通構造は同じであるがアミノ酸配列が異なるscFvは,異なる標的を認識する。よって,’190特許は,特定の標的に結合できるscFvに共通の構造的特徴を開示していないため,標的に結合できるscFvと結合できないscFvを区別できるように共通の構造的特徴が開示されていない。
また,クレーム5及び11はscFvがさらに特定の抗原(CD19)と結合することを規定しており,標的が限定されているが,CD19と結合する可能性のあるscFvが「数百万」と広大である一方,出願当時にCD19と結合することが知られていたscFvの数が少なく(最大5つ),CD19と結合するscFvの全範囲がサポートされてはいない。またscFvが当該標的に結合するのを可能とするためのscFvに関する詳細を開示していない。
以上より,CAFCは,’190特許の対象クレームが記述要件を満たさず,当該クレームは無効であると判断した。
J社は,Kite Pharma, Inc.(K社)の製品が’190特許を侵害したとしてK社を提訴した。K社は,’190特許の無効の確認判決を求める訴訟を提起した。地裁は,K社が記述要件の欠如によるクレームの無効を証明できなかったと認定し,K社の申し立てを却下した。
K社は,この判決を不服としてCAFCに控訴した。
[CAFCの判断]
CAFCは,’190特許が,「選択された標的と特異的に相互作用する」という機能的言語で定義された属クレームについて,当業者がクレームされた機能を達成する場合と達成しない場合を区別できるように代表的な種または共通の構造的特徴を開示しておらず,記述要件を満たす実質的な証拠がないため,当該クレームは無効であると判断した。’190特許のクレーム3及び9は,上記CARを構成する3つの部分のうち,結合要素を単鎖抗体(scFv)に限定しているが,標的は限定されておらず,任意の標的に結合するための任意のscFvを広くカバーしている。しかし,明細書には2つの異なる標的に結合する2つのscFvの例のみしか開示されておらず,またそれらが広大な属全体をどのように代表しているかを判断するための詳細は開示されていない。
また,共通の構造的特徴に関しては,scFvは一般的に共通の構造を持っているものの,一般的な共通構造は同じであるがアミノ酸配列が異なるscFvは,異なる標的を認識する。よって,’190特許は,特定の標的に結合できるscFvに共通の構造的特徴を開示していないため,標的に結合できるscFvと結合できないscFvを区別できるように共通の構造的特徴が開示されていない。
また,クレーム5及び11はscFvがさらに特定の抗原(CD19)と結合することを規定しており,標的が限定されているが,CD19と結合する可能性のあるscFvが「数百万」と広大である一方,出願当時にCD19と結合することが知られていたscFvの数が少なく(最大5つ),CD19と結合するscFvの全範囲がサポートされてはいない。またscFvが当該標的に結合するのを可能とするためのscFvに関する詳細を開示していない。
以上より,CAFCは,’190特許の対象クレームが記述要件を満たさず,当該クレームは無効であると判断した。
(成田 涼一)