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専門委員会成果物
2つのイメージセンサから得られた画像を用いて画質を向上させるデジタルカメラの発明について,抽象的アイデアを超えないと判断された事例
CAFC判決 2021年6月11日Yu, et al. v. Apple Inc.
[経緯]
発明者であり特許権者であるYuら(以下,Y)は,複数のイメージセンサを使用するデジタルカメラに関する特許6,611,289(’289特許)を有しており,Apple Inc.(以下A)と,Sumsung Electronics Co., Ltd.(以下S)との各々に対し,’289特許を侵害しているとして地裁へ提訴した。
’289特許のクレーム1は,デジタルカメラが有する2つのイメージセンサからの画像を用いて画質を向上させることを主旨とした発明である。
AとSは,’289特許のクレームが特許法101条による特許適格性を有さないとして,訴の却下の申立て(連邦民事訴訟規則12(b)(6))を行った。
地裁は,撮影した2つの写真を用いて画質を向上させることが写真家により長年知られていたことから,’289特許のクレーム1に記載された2つの画像を用いて画質を向上させるという処理が抽象的アイデアに過ぎないと認定し,かつ,その他の構成について,従来のデジタルカメラが有する部品と同程度の記載であることから,抽象的アイデアを超える程の発明概念を有さないと認定した。その結果,’289特許の特許適格性は否定され,Yの訴えは却下された。
Yは,訴状を修正し再び訴えを提起したところ,同様の理由により,訴えが棄却されたため,CAFCに控訴した。
CAFCは,特許適格性を検討するにあたり,Alice判決の2ステップテストを採用した。
まず,ステップ1の検討において,第2のデジタル画像データを用いて第1デジタル画像の画質を向上させるという処理が’289特許のクレーム1で記載されている点に着目し,この処理について,撮影された二つの画像を用いて何らかの方法で画質を向上させるとの抽象的アイデアに向けられていると認定した地裁の判断を支持した。
Yは,明細書の具体的な構成を示して,従来のデジタルカメラの問題に対する特定の解決策を提供しており,特許適格性のあるデジタルカメラ機能の改善に向けられている旨を主張した。
しかし,CAFCは,Yが指摘する’289特許の明細書では,三原色(i.e., 赤,緑,青)の各々に対応する3つの単色イメージセンサと1つの白黒イメージセンサとで構成された合計4つのイメージセンサを用いることにより,従来よりも低コストで高画質化を実現するデジタルカメラを提供できる旨が随所で述べられており,これに対し,クレーム1がイメージセンサとしては2つのイメージセンサのみを要件とすることは,クレームが抽象的アイデアに向けられていることを強調していると判断した。
次にCAFCは,ステップ2の検討において,’289特許のクレーム1の残りの部分が,従来のデジタルカメラが有するのと同じ周知の構成を列挙したものであり,上述の抽象的アイデアを特許適格性のある発明に変換するに足る発明概念を有さない,と判断した。
一方,CAFCの一部の判事(Newman氏)は,特定の発明が新規であるかどうかの問題は101条の特許適格性の判断の領域ではないとして,反対意見を表明した。
’289特許のクレーム1は,デジタルカメラが有する2つのイメージセンサからの画像を用いて画質を向上させることを主旨とした発明である。
AとSは,’289特許のクレームが特許法101条による特許適格性を有さないとして,訴の却下の申立て(連邦民事訴訟規則12(b)(6))を行った。
地裁は,撮影した2つの写真を用いて画質を向上させることが写真家により長年知られていたことから,’289特許のクレーム1に記載された2つの画像を用いて画質を向上させるという処理が抽象的アイデアに過ぎないと認定し,かつ,その他の構成について,従来のデジタルカメラが有する部品と同程度の記載であることから,抽象的アイデアを超える程の発明概念を有さないと認定した。その結果,’289特許の特許適格性は否定され,Yの訴えは却下された。
Yは,訴状を修正し再び訴えを提起したところ,同様の理由により,訴えが棄却されたため,CAFCに控訴した。
[CAFCの判断]
CAFCは,地裁の判断を支持した。CAFCは,特許適格性を検討するにあたり,Alice判決の2ステップテストを採用した。
まず,ステップ1の検討において,第2のデジタル画像データを用いて第1デジタル画像の画質を向上させるという処理が’289特許のクレーム1で記載されている点に着目し,この処理について,撮影された二つの画像を用いて何らかの方法で画質を向上させるとの抽象的アイデアに向けられていると認定した地裁の判断を支持した。
Yは,明細書の具体的な構成を示して,従来のデジタルカメラの問題に対する特定の解決策を提供しており,特許適格性のあるデジタルカメラ機能の改善に向けられている旨を主張した。
しかし,CAFCは,Yが指摘する’289特許の明細書では,三原色(i.e., 赤,緑,青)の各々に対応する3つの単色イメージセンサと1つの白黒イメージセンサとで構成された合計4つのイメージセンサを用いることにより,従来よりも低コストで高画質化を実現するデジタルカメラを提供できる旨が随所で述べられており,これに対し,クレーム1がイメージセンサとしては2つのイメージセンサのみを要件とすることは,クレームが抽象的アイデアに向けられていることを強調していると判断した。
次にCAFCは,ステップ2の検討において,’289特許のクレーム1の残りの部分が,従来のデジタルカメラが有するのと同じ周知の構成を列挙したものであり,上述の抽象的アイデアを特許適格性のある発明に変換するに足る発明概念を有さない,と判断した。
一方,CAFCの一部の判事(Newman氏)は,特定の発明が新規であるかどうかの問題は101条の特許適格性の判断の領域ではないとして,反対意見を表明した。
(平本 宏一)