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専門委員会成果物
クレーム解釈において辞書での定義(外部証拠)より審査経過に基づく解釈(内部証拠)を優先した事例
CAFC判決 2021年5月12日Uniloc 2017 LLC v. Apple Inc.
[経緯]
Apple Inc.(A社)は,Uniloc 2017 LLC(U社)保有の通信システムに関する特許8,539,552(’552特許)の全てのクレームが,特許6,324,279(’279特許)に基づき特許性が無いとして,IPRを申し立てた。
’552特許のクレームは,ネットワークエンティティが,送信デバイスと受信デバイスの間の通話に関するシグナリングメッセージを傍受(intercepting)し,サービスを起動する情報を含むシグナリングメッセージに基づいて,デバイスがサービスを呼び出す権限があるかどうか判断し,シグナリングメッセージを意図した相手(受信デバイス)に送れるようにフィルタリングする,という内容である。サービスとは,例えば,発信者ID,キャッチホン,コーデック仕様などのうち少なくとも1つである。
一方,’279特許は,ネットワークエンティティにあたるゲートコントローラが発信者・受信者間の通信の発信者の認証やサービス承認を行い,サービスには発信者IDが含まれる点を開示している。
IPRの結果,PTABは,’279特許のエンドポイント間のネットワークエンティティによる受信が,シグナリングメッセージの傍受を開示しているとして,’552特許の一部のクレームを無効と判断した。
この判断に対し,U社は,PTABのクレーム解釈が誤っていると主張し上訴した。
CAFCは,クレーム解釈を審査履歴,明細書,およびクレーム文脈に焦点を当てて行い,これらの内部証拠は辞書の定義よりも重要であると判示した。’552特許のクレーム中の「傍受(intercepting)」が’279特許の「シグナリングメッセージが,ゲートコントローラによって受信される」ことを意味するという解釈,すなわち,ネットワークエンティティがシグナリングメッセージの意図された受信者になる場合もあるという解釈は,’552特許の明細書や審査経過での出願人主張と一致することから,CAFCは,’279特許に基づき’552特許のクレームが自明であるとしたPTABの判断を支持した。
’552特許のクレームは,ネットワークエンティティが,送信デバイスと受信デバイスの間の通話に関するシグナリングメッセージを傍受(intercepting)し,サービスを起動する情報を含むシグナリングメッセージに基づいて,デバイスがサービスを呼び出す権限があるかどうか判断し,シグナリングメッセージを意図した相手(受信デバイス)に送れるようにフィルタリングする,という内容である。サービスとは,例えば,発信者ID,キャッチホン,コーデック仕様などのうち少なくとも1つである。
一方,’279特許は,ネットワークエンティティにあたるゲートコントローラが発信者・受信者間の通信の発信者の認証やサービス承認を行い,サービスには発信者IDが含まれる点を開示している。
IPRの結果,PTABは,’279特許のエンドポイント間のネットワークエンティティによる受信が,シグナリングメッセージの傍受を開示しているとして,’552特許の一部のクレームを無効と判断した。
この判断に対し,U社は,PTABのクレーム解釈が誤っていると主張し上訴した。
[CAFCの判断]
上訴において,U社は,クレーム中のネットワークエンティティによる「傍受(intercepting)」の解釈について辞書を援用し,当該ネットワークエンティティが,意図された受信者(intended receiver)になることはできないと主張した。CAFCは,クレーム解釈を審査履歴,明細書,およびクレーム文脈に焦点を当てて行い,これらの内部証拠は辞書の定義よりも重要であると判示した。’552特許のクレーム中の「傍受(intercepting)」が’279特許の「シグナリングメッセージが,ゲートコントローラによって受信される」ことを意味するという解釈,すなわち,ネットワークエンティティがシグナリングメッセージの意図された受信者になる場合もあるという解釈は,’552特許の明細書や審査経過での出願人主張と一致することから,CAFCは,’279特許に基づき’552特許のクレームが自明であるとしたPTABの判断を支持した。
(島崎 武嗣)