専門委員会成果物

別件の特許権侵害訴訟を通じて入手した証拠が,特許権侵害訴訟の証拠として認められなかった事例

CAFC判決 2021年4月6日
Wi-LAN Inc. v. X社

[経緯]

 Wi-LAN Inc.(W社)は,ビデオモニタに関する特許の特許権者である。W社は,X社らが製造するスマートテレビに対し,特許権侵害で提訴した。
 W社は,地裁において,第三者であるチップメーカーからソースコードのプリントアウトと称する文書と,チップメーカーの従業員によってソースコードが真正であると宣誓された宣誓書を証拠として提出していた。
 しかし,W社が提出した文書が直接侵害を証明するのに十分な証拠能力を有していないと地裁は判断し,非侵害とする判決を下した。そのため,W社はCAFCに上訴した。  

[CAFCの判断]

 CAFCは地裁の判決を支持した。
 チップメーカーはソースコードの提供に難色を示していたため,W社はチップメーカーに対しても特許権侵害訴訟を提起し,ソースコードを提出させた後に訴訟棄却することでソースコードの文書と宣誓書を入手していた。
 米国連邦証拠規則803条(6)によれば,伝聞証拠であっても一定の要件を満した業務上作成された文書であれば訴訟での証拠能力が認められるため,宣誓書はチップメーカーが業務上作成した業務記録であるとW社は主張した。しかし,W社が提出した宣誓書は訴訟のために作成された文書であり,通常の企業活動の中で作成された業務記録でないとして,証拠として採用することはできないとCAFCは判断した。
 また,宣誓書は通常,裁判の証言の代理として使用される。今回提出されたソースコードの文書と宣誓書は,別件の訴訟の過程でチップメーカーより提出されたものを援用しているため,W社はチップメーカーの従業員が本裁判で証言できることを立証できていない。そのため,CAFCは,宣誓書を証言の代わりとして使用することはできないとした。
 以上の理由より,CAFCは連邦地裁の解釈は正しいと結論付けた。

(辻 耕平)

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