専門委員会成果物
内的証拠及び外的証拠に基づいてクレームの用語が解釈され,IPRにおけるPTABの最終決定が支持された事例
CAFC判決 2017年11月30日AIP ACQUISITION LLC v. CISCO SYSTEMS, INC.
[経緯]
AIP ACQUISITION LLC(A社)はインターネットを使用して互換性のない電話ネットワークを相互接続するためのシステム及び方法に関連する特許7,269,247(’247特許)を保有している。一方,CISCO SYSTEMS, INC.(C社)は,’247特許のクレーム1〜29は自明であるとしてIPRを申請し,PTABは,審理対象の全クレームが無効であるとする最終決定を下した。
これに対し,A社は,PTABの決定には誤りがあると主張してCAFCに控訴した。
[CAFCの判断]
問題の所在は,’247特許の「internet protocol」(クレーム1)及び「Internet protocol」(クレーム16)の解釈である。A社はいずれの用語(「I/internet protocol」)も,「TCP/IP」の「Internet Protocol(IP)」に限定して解釈されるべきであると主張した。
これに対し,CAFCは,内的証拠及び外的証拠に基づき,前述のいずれの用語も「TCP/IP」の「Internet Protocol(IP)」よりも広く解釈されるべきであると判断した。具体的には, 内的証拠に関し,CAFCは,クレームにおいて特許出願人は「internet」の「i」と「protocol」の「p」とを大文字で表記することにより,「TCP/IP」の「IP」のような特定の プロトコルをクレームすることができた。それにも関わらず,小文字で表記したことから,「I/internet protocol」は特定のプロトコルに限定して解釈されるべきではないと判断した。
また,CAFCは,明細書においても,「I/internet protocol」が,明細書中の「TCP/IP」に関連する記載に対応付けられていないことからも,「I/internet protocol」が特定のプロトコルに 限定して解釈されるべきではないと判断した。
更に,外的証拠に関し,CAFCは,先行技術文献と辞書とを参照し,「Internet Protocol」は,「internet protocol」の1つの特定である等としたPTABの判断は適切であると説示した。
上述の理由により,CAFCはPTABの「I/internet protocol」の解釈が妥当であるとし,PTABの最終決定を支持した。
(吉田 真志)
