専門委員会成果物
先行文献に基づき自明であるとした審判部の判断が誤りとされた事例
CAFC判決 2017年８月25日In re：Stepan Company
［経緯］
Stepan Company（Ｓ社）はdialkoxylated alkylamines（成分Ａ），water miscible solubilizers（成分Ｂ），及びamine oxides（成分Ｃ）を特定の比率で含みかつ曇点が少なくとも70℃を超える 界面活性剤を含むことを特徴とする，除草剤グリホサートの製剤に係る発明の米国特許出願12/456,567（’567特許出願）を行った。これに対して審査官は，先行文献（Pallas）等に基づき，当業者が通常行う最適化の範囲内であって自明であるとし，拒絶査定を下した。この査定を不服として，Ｓ社は審判を請求した。 続いて，審判部もこの拒絶査定を支持する審決を行った。この審決を不服として，Ｓ社がCAFCに控訴した。
なお，Pallasは，曇点が50〜60℃である界面活性剤を含むグリホサート製剤，例えば，実施例76には成分Ａ及びＢを含む製剤，実施例127には成分Ａ及びＣを含む製剤を開示している。 また，曇点は60℃以上であることが望ましく，好ましい界面活性剤として成分Ｃを含むことを開示している。
［CAFCの判断］
CAFCは以下�，�ら��の理由により，審判部の判断を誤りとして審決を破棄した。�／拡宿瑤蓮ぁ�567特許出願にクレームされる発明に到達することが当業者にとって通常行う最適化の範囲内であり，また成分Ａ〜Ｃの組合せにより曇点が70℃以上になると合理的に予測し得た理由を明確に示していない。
�■喙劼蓮と�明と構成が類似するPallasの実施例76及び127の曇点が70℃に到達しないデータを示したが，審判部はいずれも成分Ｃを好ましいとするPallasの開示と比較されるものではないとして，当該データを 重要でないと判断した。また，審査官は成分Ｃを含む実施例127を争点に挙げていなかった。従って，当該データを軽視した審判部の論拠は支持を欠く。
�Ｋ寨茲呂泙鎖拡宿瑤�一応の自明性を示す責任があるところ，�，傍�載の通り，自明である理由を明確に示しておらず，また’567特許出願のクレームの構成要素の一つである曇点が70℃以上であることが， 当業者にとって自明である理由が何ら示されていないことから，審判部は一応の自明性を示す責任を果たしていない。
（舟津 孝明）
