専門委員会成果物
“Means”という単語を用いてもミーンズ・プラス・ファンクションクレームに該当しないと判断した事例
CAFC判決 2017年6月7日Skky, Inc. v. MindGeek, S.A.R.L., et al.
[経緯]
Skky, Inc.(S社)は音声/画像を無線装置に配信する方法の特許を出願した。USPTOの審査過程において,クレーム中の“wireless device”という文言を“wireless device means”と補正したことで ミーンズ・プラス・ファンクションクレームとして審査官に解釈され,“wireless device means”という用語は音声/画像データを処理するという機能によりマルチプロセッサを有する特定構造に限定されることから, 特許7,548,875(’875特許)として許可となった。この’875特許に対してMindGeek, S.A.R.L.らが,IPRを請求した。PTABは“wireless device means”は純粋な機能を示す用語ではなく構造を示す用語であるとしてミーンズ・プラス・ファンクションクレームには 該当しないと判断した。その結果,“wireless device means”はマルチプロセッサを有する特定構造に限定されなくなり,公知例により自明であるとして’875特許は無効となった。
これを不服として,S社はCAFCに控訴した。
[CAFCの判断]
CAFCは,PTABの判決を支持した。CAFCは,“wireless device means”との用語が当業者において一般的に構造として用いられていることを理由として,“means”という単語を用いていても機能ではなく構造であると判断し, ’875特許はPTABが挙げた公知例により特許性を有さないと結論付けた。
また,許可通知時の審査官見解(Examiner’s statements)において,審査官が“wireless device means”との文言をミーンズ・プラス・ファンクションクレームとみなした理由及びこの文言により 公知例が排除される理由が明示されておらず,CAFCは当該審査官判断には拘束されないとした。
(宇都宮 依子)
