専門委員会成果物
文言解釈により，プロダクトクレームが製法限定で判断された事例
CAFC判決 2017年４月６日The Medicines Company v. Mylan, Inc., Mylan Pharmaceuticals Inc., Bioniche Pharma USA, LLC
［概要］
The Medicines Company（Ａ社）は，自社が販売する先発医薬品ANGIOMAX®（一般名：bivalirudin）について，その製造バッチに関する特許7,582,727（’727特許）及び特許7,598,343（’343特許）を 保有している。いずれも不純物Asp9-bivalirudinが一定量以下となる製造バッチに係る特許である。Mylan, Inc., Mylan Pharmaceuticals Inc., Bioniche Pharma USA, LLC（Ｂ社）は，Hatch-Waxman法に従い，Orange Bookに掲載される’727特許及び’343特許について無効及び非侵害であることに基づく， ANGIOMAX®のジェネリック医薬品（Ｂ社後発品）の承認申請，いわゆるparagraph�犬亡陲鼎�ANDA（Abbreviated New Drug Application）申請を行った。
これに対しＡ社は，’727特許及び’343特許は有効であり，Ｂ社後発品は当該特許権を侵害するものとして，ANDA訴訟を提起した。
地裁では，’343特許はクレームされる製造バッチがpH調整剤のefficient mixingを行ったものに限定されており，Ｂ社後発品はこれを行っていないことから非侵害と判断された。一方，’727特許はefficient mixingがクレームに記載されておらず，Ｂ社後発品がクレームの構成要件を全て充足することから侵害と判断された。
Ｂ社は’727特許への判決を不服としてCAFCへ控訴し，Ａ社は’343特許への判決を不服として交差控訴した。
CAFCでは，’727特許がefficient mixingを構成要件として含んで解釈されるべきか否かが主な争点になった。
［CAFCの判断］
CAFCは，’343特許については地裁の判決を支持した。しかし’727特許については地裁の判決を覆し，非侵害の判断を行った。すなわち，’727特許のクレームに記載されるbatchesという文言は，バッチ間の均一性を達成する混合プロセスを含むバッチとして解釈すべきであり，その混合プロセスとして本願では実施例５に記載されるような 条件でpH調整剤のefficient mixingを行うことが必要と解されるから，’727特許はefficient mixing要件を含むと解釈すべきであり，Ｂ社後発品はこれを行っていないため，非侵害である旨判断している。
なお，本判決では’727特許及び’343特許の有効性までは判断していない。
（舟津 孝明）
